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大注目の怪獣芸術家ピコピコ氏とはどんな人物なのか? ピコピコ インタビュー

最新作の「太陽の死の引導者」で圧倒的な存在感を見せつけた怪獣芸術家ピコピコ氏! 現在、MAX TOYやOne up.でも精力的に新作を準備中。ぬいぐるみ、着ぐるみ、絵画、立体造形と多義に渡る作品(「怪獣芸術家ピコピコ怪獣図鑑Part1」「怪獣芸術家ピコピコ怪獣図鑑Part2」)とともに怪獣芸術家・ピコピコ氏とは一体何者なのか? その素顔と哲学を紹介していこう!

大注目の怪獣芸術家ピコピコ氏とはどんな人物なのか? ピコピコInterview
↑ピコピコ氏も勤務する大怪獣サロンにて近影。大怪獣サロンは、今年3月に新装開店し店内もぐっと広くなった。世界で唯一の怪獣ホステス・ムーチョさんが出迎えてくれるぞ!

1.活動の始まりについて

―最初に本格的に創作活動を開始された年を教えて下さい。
1996年に開催した初個展「ピコピコ展」からです。この時期は、布で作るぬいぐるみがメインでした。

―ピコピコさんと言えば着ぐるみですが、それはいつぐらいからなんですか?
この時期バンド活動してて、あるライブに出ることになった時「どうせやるなら!」って初制作したんです。

―ライブ用に? 着ぐるみっていきなり作れるものですか?
おもしろいでしょ(笑)。当時は布で作っていました。布は縫製の問題だからなんとか作れるんです。その流れで1997年にはフジテレビの深夜番組『よいこっち』のエンディングを、ぬいぐるみバンド・ピコピコとして担当して、このインパクトから「着ぐるみの人」に見られるようになり今に至ります(笑)。

―今はラテックスで着ぐるみを制作されていますよね。
増田セバスチャンさんが原宿でやっているショップ・6%DOKIDOKIが製作した「FAIRY TALE」(2005年)というビジュアルショーがあって「“怪獣”ならこの素材!」と思いウレタンとラテックスに初挑戦しました。ただ通常の作り方と違い、布で作った経験を活かして型紙から起こす制作法を独自に編み出したんです。通常の作り方は、大量にウレタンを使用するので予算がかかるので安く上げるためでした。

―本格的な活動以前より様々な創作はされていたと思います。それはどのような創作だったんでしょうか?
個展デビュー前から趣味の範囲で“変な生き物”を作り続けて、ギャラリーのグループ展に参加していました。小さい頃から粘土で何かを作ってて、ずっとその延長線上なので特別な意識もなく区切りは今に至るまで全然ないんです(笑)。

―作品で“怪獣”を打ち出すようになったのはいつ頃ですか?
1997年頃に参加したグループ展で、アーティストブック企画があり、そこで初めて“怪獣”をタイトルに本を作ったことです。それまで同じようなことをしていましたが“怪獣”とハッキリ言ってなかった。最初は「アートで“怪獣”はどうか?」という葛藤がありましたが「だからこそ打ち出した方がおもしろい!」と思い直したんですね(笑)。

―その思い直したきっかけって何かあったんですか?
きっかけというより、アートの世界でスタートして「ここで、本当に自分のやりたいことがやれているのか?」と考えた時、自分の気持ちを解放したからです。

―なるほど! 次にピコピコという名の由来を教えて下さい。
1995年ぐらいに作ったコピー同人誌のタイトルが「ハードポップおもしろ新聞ピコピコ」で、理由もなく適当につけた名前です。「アーティスト名もそれでいいや」って思い、本当に考えてなかったですね(笑)。

―「怪獣芸術家」を名乗るようになったのはいつからでしょうか?
いつだろう……具体的には覚えてないです(笑)。名乗った理由は、以前から活動は変わらないけど、着ぐるみだけでもないので総合的な肩書きとして「自分は何者か? 一言で説明できた方がいい」という所からでしたね。かといって「アーティスト」や「クリエイター」、「芸術家」と名乗るのは気恥ずかしい。バカバカしい肩書きが「いい」と思い「怪獣」+「芸術家」にしてみたんです。

―なぜ「バカバカしい方がいい!」と考えたんですか?
なんででしょう? アートの世界って本来、自由なはずなんだけど、どこかカッコつけて不自由になっているいようにも感じられて、それが嫌だったんです。それへの反抗というか……「もっと怪獣みたいに自由でいいのでは?」と思ったからです。

2.多岐に渡る活動について

―「着ぐるみ」や「立体」や「絵」と創作は多岐に渡ります。「どれがメイン?」という意識はあるんですか? 
結局“怪獣”という表現をやりたいだけです。その時々で合ったやり方をした結果で、特に意識はありません。やりたいことがいろいろとあるし、例えば最初が「着ぐるみ」でも、後に「立体」や「絵」にする時、また別のアレンジになっていきますからね。

―“怪獣”がテーマなだけに立体作品は多いですよね。
それは“怪獣”以外に「おもちゃ好き」というのも根っこにあるからです。アートという枠の中であえて「おもちゃをやる!」のがバカバカしくておもしろいと思うんです。逆におもちゃなのに「アート」ぶっているのは苦手です(笑)。また「1日1怪獣!」を描いているので、これがいろんなアイデアの肥やしになっています。依頼をいただいた時、そこから引っぱり出してくることはよくあります。

―1日1怪獣は凄いですね!? それはいつぐらいからですか。今でもですか?
もう10年ほど続いてて、3000体を超えました(笑)。

―これまでの作品の中でお気に入りの作品はありますか?
ベッコスの着ぐるみです。初登場が2007年ロックバンドRIZEのPVなんです。ベッコスは依頼ではなく、作りたくて作ったんですよ。とにかく“怪獣”が好きなんです。ここで誤解してほしくないのが怪獣の活躍を描く「怪獣作品」が好きなのではなく“怪獣”そのものが好きで、自分にとって大事だということ。“怪獣”っていろんな境界……現実とファンタジーだったり、意識と無意識の狭間だったりの向こう側からくるもので、それを凄く象徴していますよね。いわゆるアートもそういうことでしょ(笑)。

―そういう“怪獣”哲学を持ちながら、依頼原型も引き受けられていますよね。作品と気分的に違う所とかありますか?
私に依頼ということは“ピコピコテイスト”を求められていることだと思うんです。だからそこは自由にやらせてもらうようにします。単に原型を依頼するだけなら、もっと上手く作れる人はいますから(笑)。

―ちなみに“ピコピコテイスト”ってなんだと思いますか?
なんでしょう……「ポップさと毒が入って」みたいな部分かな。そんなに意識はしていないけど……。後は細かく作るのが好きだからディティールを入れるのは好きですけどね。

3.個人的な趣味などについて

―子供の頃好きだった作品について聞かせて下さい
子供の頃は第2次怪獣ブームだから、毎日放映される怪獣番組が好きでした。この世代の男の子はみんな“怪獣”が好きで、それは当たり前なことでした(笑)。ちなみに大好きな“怪獣”は、その時によって変わるけど『ウルトラ』シリーズでいうと『ウルトラマン』のブルトン! 「あれが着ぐるみなんだ!」という感じで相当くるものがありました。ほかにカネゴンやブースカも好きだし『帰ってきたウルトラマン』のツインテールやタッコング、『スペクトルマン』のダストマンなどの公害怪獣も好きです。カッコイイ系というより醜くて可愛い“怪獣”。カッコイイと醜いは反語ですよね。実は可愛いもそう。だから醜いと可愛いは凄く親和性が高いと思うんです。カッコイイは見上げる凄い存在でヒーローなんかはそうですよね。逆に醜いや可愛いは見下ろせる存在で、その部分にシンパシーを感じるんです。ヒーローにはなりたくないけど“怪獣”にはなりたい。

―“怪獣”の代表であるゴジラは、圧倒的にカッコイイ見上げる存在ですが、それは?
基本的なタイプの“怪獣”も好きですが、異形の方がより好きで『クレクレタコラ』なんかは、自分にとってかなり重要です。カネゴン的でお友達感覚だけど異形というのがいいんですよ。

―お話聞いていると、ほんとこの世代だったことが今のピコピコさんが作られる上で重要ですね。
ちなみに“怪人”は?

“怪人”も嫌いじゃないけど基本的に人型だからデザインも飛躍がないですよね。やはり“怪獣”の方が形が変ですから好きでした。あと『宇宙戦艦ヤマト』も好きでしたがメカにはいかなかったな。飛行機よりも動物が好きで動物図鑑が大好きだったんです。図鑑は1冊に全てが詰まっているところがたまらなかった。だから怪獣映画より怪獣図鑑が好きだし、自分でも怪獣図鑑を作ってしまったんですね(笑)。

―なんでそこまで“怪獣”に心をつかまれてしまったんでしょう?
逆になぜみな大人になって“怪獣”に興味がなくなるのかが解らないんですよね(笑)。私の場合、好きなものが変わらないだけで……理由はなんだろう。抑圧からの解放みたいなものが非常に大きいと思いますけど。

―子供時代、抑圧されているんですか?
子供って常に親から抑圧されているものですよね。また大人になっても抑圧は感じているはずだし。だからこそ常にはけ口が必要なわけですよね。自分にとっては、そういう意味で“怪獣”なんだと思います。現実を壊してくれる存在というね。

―大人になってから新たに影響を受けたものってありますか?
刺激を受けるという意味でおもちゃは大きいです。アメトイのバカバカしいギミックなどおもしろいと思います。自分の中で消化しているので作品を見ても解らないと思うけど結構、影響を受けています。ほかに大人になってからだと『ウルトラ』怪獣をデザインした成田亨さんは衝撃でした。今はそこまで意識はしてないですが、当時は「だからこそ成田亨になってはいけない!」と思いました。今は単に“怪獣”だけ見ても新しいアイデアは産まれないので、ほかにもいろんなアートとか見るようにしています(笑)。

―ちなみにアートで「凄い!」と感じた作品はありますか?
縄文などの原始美術や、南米やニューギニア、アフリカなどの民族美術の影響は大きいですね。あと山下菊二とかタイガー立石とかいろいろ好きですが、唯一芸術作品を見て、わけも解らずに涙が出たのって、大人になってから見た岡本太郎作・太陽の塔なんです(笑)。あとは超メジャーですけど、やはりピカソは素晴らしいと思います。どちらもプリミティブだと思うし、とても怪獣的な表現だと思うんです。

4.現在関わりの深いソフビについて

―ソフビについても聞かせて下さい。
ソフビは壊れないおもちゃだからいいですよ。子供の頃「かっこ悪い」と思っていましたが、大人になってから「マルサン&ブルマァクはいい」と思うようになりました。この感性は、基本ノスタルジーだと思いますが、手触り感などのおもちゃの魅力は高いと思います。

―ピコピコさんの怪獣もソフビ化されていますが、やはりそれが理由ですか?
それもあるし、また“怪獣”だからソフビには思い入れは強いですよ。

―怪獣のおもちゃといえばソフビですからね。
自分が作るにあたって基本はマルサン&ブルマァク的なスタイルを意識しつつ、着ぐるみ感のリアリティやディティールを作り込むという所です。具体例でいうと最初の『ミュータントタートルズ』(1987年放映のアニメ版)時に発売されたおもちゃのデフォルメ感で、凄くデフォルメされているんだけど、ディティールがバッチリあるという造型なんですね。和洋折衷な感じを意識しています。

5.ガッキーくんについて

―ここで昨年大ブレイクし、ピコピコさんの名前を改めて世に知らしめたガッキーくんについて聞かせて下さい。
ガッキーくんでおもしろかったのは、スタンダードサイズのソフビをメディコム・トイさんから発売しましたが驚くほど売れてるんです。オリジナルのインディーズソフビが「売れない!」と言われている中、そこまで売れたことにビックリしたし、普段フィギアを買わない人も買ってくれたりしましたから「潜在的なファンは、まだいる!」ということに気付かされたことは大きかったですね。

―多くの人に知られる事は大事だということですよね。知ってもらえれば可能性はある!
「インディーズソフビだから、これ以上は売れない!」という発言もたまに耳にしますが、そうではなくてまだまだ可能性はありますよ。[VAG]も1回500円はソフビで考えると安いけど、知らないファンにとっては高い。それでも初日で完売しましたから。

―ガッキーくんは、そういう意味でインディーズソフビのドリームを見せてくれました。今後ますます注目されると思いますが、今後発売予定のソフビについて教えて下さい。
近々発売されるのはGEEK!さんの太陽の死の引導者とママチャップトイさんからチキドンです。あとOne up.さんから獅子頭、MAX TOYさんからアルティメット・サイコウビが近日発売予定です。

―楽しみです! それでは最後に今後の方向性や希望などありましたら聞かせて下さい。
今まで通りですが、遥か未来の目標だったら戯れ言っぽいけど「怪獣遊園地」を作りたいですね(笑)。近い目標だったら、駅前や公園に彫刻を置きたいです。駅前によくある「乙女の祈り」みたいなヤツ。駅前に怪獣がいるみたいな。

―気持ちが大きな作品へ向かっているんですか?
最近はソフビの造型仕事が増えて、 純粋な表現活動が出来てないので、作品を作りたい欲求は高まってます。勝手に作って公園に置いてみようかな?(笑)。今、新宿歌舞伎町にデカいゴジラ像がありますよね。あれが悔しくて! 勝手に東宝さん対してライバル心を持っています。負けてられない! 生きてるうちに、もっとデカいのを作るぞって!!

―実現したら凄いプロジェクトになりそうですね! ちなみにソフビに関しての今後は?
もっともっと一般のファンに届けたいです。先ほど言ったアートとおもちゃの関係にもっと可能性はあると思います。村上隆によって“萌え”はアートの1ジャンルになりましたし。ただそれは今あるアートトイの方向性とは全然違う所にあると思うんです。

―ガッキーくんで広がる可能性の手応えを掴んだピコピコさんだからこそ、ぜひそこに期待したいです!
“怪獣”って神話の時代からある不滅な存在だから表現的な力はなくならないと思うんですよ。それこそ今だと、本当に世界に通じるクールジャパン的なコンテンツだと思うので、これからもがんばります!
(2014年11月6日&2015年3月14日収録)

大注目の怪獣芸術家ピコピコ氏とはどんな人物なのか? ピコピコInterview
大注目の怪獣芸術家ピコピコ氏とはどんな人物なのか? ピコピコInterview
↑貴重なピコピコ氏のお仕事場。もはや足の踏み場もないほど作品であふれかえっているのだ! 右はベッコスとツノゴンの着ぐるみが!!

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