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「DesignerCon 2024」04/第4弾は、完全海外編! アメリカのインディーズの現状を探る!!

注目のレポート4回目の今回は、sofvi.tokyo的に気になっていた、アメリカのインディーズソフビの広がりについてです! もともとアメリカでは、ファインアーティストなどが自らのキャラクターをフィギュア化すること自体は以前から多い。ただしそれはいずれも中国製フィギュアで、日本のソフビなど今の怪獣ソフビ的なモノとは異なっていた。今のスタイルになるのは、2000年代になり、日本でオリジナル怪獣ソフビを製作する個人メーカーが増え、その1部が海外のトイイベントへ出店するようになってから。2000年代中期になると、日本のクリア成型の美しさを知ったアメリカのアーティストと、海外イベントへ出店したい日本のアーティスト&メーカーとの交流が繁盛に行なわれるようになる。その時期、アメリカから数多くのアーティストが来日し、日本で開催されるカスタムショーなど繁盛に参加していたのだ。今では海外ソフビ界のビッグネームのポール・カイジュウ氏やMUTANT VINYL HARDCOREなど、当時からそうしたショーで知られた存在。ちなみに今回のレポートで紹介したマーク・ナガタ氏は、1990年代後半〜2000年代前半に中国産のオリジナル怪獣ソフビを製作していたし、Candie Bolton氏も2000代後半ぐらいに日本のカスタムショーで、よく見かけた名前。ただそうした流れも2010年代に入ると少し落ち着き、2010年代中期〜後期にかけて香港、台湾を始め、中国、タイなどアジア各都市でソフビ熱が炸裂! アートトイ&トイショップやトイイベントが続々誕生し、逆にそれが日本にも飛び火し、現在のソフビシーンの熱量へ繋がってゆくのだ。そんな中ふと、もともと熱を持っていたアメリカの今は、どうなっているのか? 2000年代に撒かれたアメリカでのソフビの種は、その後、アメリカでどう育っているのか? 今回の海外取材では、それを確認したかったのだが、この種は、実は確実に確かに育っていることを確認しました! そんなアメリカインディーズソフビメーカーたちの現状を紹介します!
「DesignerCon2025」参加お問い合わせ■Don Kratzer(ドン・クラッツァ)don@designercon.com


会場を散策し、思わず立ち止まってしまったのがULTLA FOR OUT……ふたりは左から47-49DESIGNSのPatrick Fahy氏、ULTLA FOR OUTのNick Nazzaro氏


いやもうわかるでしょ「戦車恐竜 TANK-DAINO」ですよ。日本の怪獣好きなら誰もが知る『ウルトラセブン』登場の「恐竜戦車」の逆をいくデザイン! これは一見パチモノ? いいえ、戦車の砲そのままの頭部にボディが恐竜というシンプル極まりないデザインは完全にオリジナルではないか!? このソフビは、47-49DESIGNS × ULTLA FOR OUTとのこと。この赤茶色が「DesignerCon」限定カラー。サイズは全高約22cmぐらいだが、ボリュームはもっと大きく感じる


ブラウンの「戦車恐竜 TANK-DAINO」が通常カラーなのだ


クリアの小さなキャラクターたちは3Dプリンター出力。よく見ると戦車の砲の頭部と銃の頭部の2バージョンある

制作について47-49DESIGNSのPatrick Fahy氏にお聞きした。
「ブラザーと私は『ゴジラ』と『ウルトラマン』を見て育ち、そこに登場する怪獣が大好きでした。これは『ウルトラセブン』の『恐竜戦車』にインスパイアされました。この怪獣が好きで、とてもクールでおもしろいと思いました。それで、私たちは逆に発想したんです。『恐竜戦車』は『恐竜』が上、『戦車』が下になっています。そこでブラザーは『恐竜戦車』が、どの『戦車』かを正確に突き止め、私はその砲塔をモデル化して逆の『戦車恐竜 TANK-DAINO』を作りました。また私たちは、日本の昔ながらのソフビ制作に忠実でありたいとも思っていました。ソフビは、MILE HIGH SOFUBI社によって製作されました。彼らをご存知ですか? 金型を中国で作りコロラド州にある、MILE HIGH SOFUBI社で成型しています。これは日本の伝統的な成型スタイルですが、アメリカ製なんです」
なんとアメリカには、日本的なスラッシュ成型が可能な工場があるのだ! これは初めて知ったのでビックリ!!

「ソフビの製作は2020年にMILE HIGH SOFUBI社のPaul Jさんと話をすることから始めました。それから約1年間、デザインについてやり取りし、初めてソフビを生産したのが2021年なんです。今後、別のキャラクターを作る計画があります。それは友人であるNickとのコラボレーションです。彼は宇宙をテーマにした作品を手がけており、この『Itty Bitty Space Explorer』を描き、私が3Dプリンターで製作し、出力したんです。ほかにも別のキャラクターでソフビ化の計画もあります」
というので今後も注目したい!

ちなみに「DesignerCon」ついては、彼がマサチューセッツ州ボストンの出身のため主に東海岸のニューヨークで開催されるイベントに出店しており、西海岸のラスベガス開催となった「DesignerCon」は今回が初めてだったという


小さな「戦車恐竜 TANK-DAINO」の足元にいる兵隊についてPatrick Fahy氏。
「これらの小さな兵隊たちは、Tシャツから来ています。ほら、これはNickがイラストを手がけた、彼と私とのコラボレーションです。彼は信じられないほど才能があります」
アートは全てNick Nazzaro氏によるもの。確かにとても良い。Nick氏のお仕事はテレビアニメ製作で『リック・アンド・モーティ』などに参加している。なるほどイラストの雰囲気が良いのも
頷ける!


そんなNick Nazzaro氏とエビキヨ先生!


マルサンブースのお手伝いで来場していたRoger Harkavy氏。それでわかるようにRoger氏は大の怪獣ソフビ好きで、日本にも何度も来日経験あり。なんと2019年5月にsofvi.tokyo編集長とエビキヨ先生が日本で開催したソフビトークイベント「ソフビ原理主義」第1回に来場していた強者でした!! 右はマルサン代表の神永英司氏


Roger氏がマルサンブースで発売していたのが、自分のブランド・GARDEN STATE KAIJUで製作した「SpaceBeastsシリーズ Mudbelly」。この彩色は、アーティスト・久保亜沙香氏が担当したバージョン。ちなみに造形はStephen Geddes氏が担当し、キャラクターはNeil Ewing氏が描き現在、GARDEN STATE KAIJUでも発売中。

「これは私の最初のソフビです。これらはコロラド州の都市デンバーにあるMILE HIGH SOFUBIのPAUL Jさんの所で成型されています。すでに多くのバージョンを作りました。グリーンが通常版でこれはずっと生産します。限定バージョンは、自然からアイデアを得ることが多いですね。彩色はBombastic Plastic社の友人ニール・ユーイングさんです」
なんと成型は「戦車恐竜 TANK-DINNO」で教えてもらったMILE HIGH SOFUBI! つまりメイド イン アメリカでした! そして彩色のニール氏は、sofvi.tokyoを見て彩色を研究しているという、うれしいコメントも!

なぜソフビを製作するようになったのかお聞きした?
「もともと『スター・ウォーズ』が好きで、いろんなおもちゃなどコレクションしていました。そして1990年代後半ぐらいにマルサンやM1号の怪獣ソフビと出会ったんです。そして2020年、2021年のコロナによるロックダウン中、おもちゃにどれだけ代金を使ったか? それを振り返った時『これだけあれば自分のおもちゃを作れる』と判断したんです」という。確かにコレクションにかかる費用は、ソフビが作れるぐらい膨大だ(笑)


そして製作した「SpaceBeastsシリーズ Mudbelly」だが日本の怪獣ソフビとは少々異なるデザインに感じる。どうしてこのようなデザインになったのだろうか?
「私は『STAR WARS』が大好きなんです。公開された時、私は7歳だったので、その後の自分の人生のような作品なんです。そこで当時発売されたケナーの『デューバックwithサンドトルーパー』というおもちゃがあるんですね。それが『Mudbelly』のアイデアのベースなんですよ。それは大きくて、背中に『サンドトルーパー』のフィギュアを入れられる穴がある。だから『Mudbelly』の背中には、そのオマージュとして穴のモールドを入れているんです」と解説。
またモチーフはほかにもあり。ブルマァクのミニサイズが好きで、四つ足、二つ足どちらもOKな「ミニスカイドン」のアイデアも「Mudbelly」に活かされているという。まさに自分の人生を反映したソフビということだ!


Roger氏がもうひとつ見せたかったというのが足裏の刻印! それはニュー・ジャージー州の形を刻印なのだ!
「ここは私の出身地でもあり、そこにGARDEN STATE KAIJUがあるのです」
ちなみにアメリカには各州にニックネームがある。例えばニューヨークはエンパイアステイトなど。このニュー・ジャージーのニックネームがガーデンステイツなので、彼のブランドがその名前になったのだ

Roger氏は続けてくれた。
「私にとってソフビは、例えば超合金みたいにアクション機能付きで変身したり変形したりするおもちゃと違って、そのキャラクターの基本的な形そのもので、とてもピュアな存在で、そこが好きなんです。そして、私はこの世界全体が大好きだし、神永さんたちと一緒に仕事をすることが大好きです。M1号の西村(祐次)さんのことも、以前から知ってて、5年前ぐらいにイベントで初めて会いました。英語には『フルサークル』(完全な円。一周回って元に戻ってくるという意味)という考え方があります。この場合、ソフビを作る多くの人たちと一緒に仕事をして、そこからインスピレーションを得て、新たなソフビを作り、今回のように久保さんに彩色してもらう! これはとても光栄なことです。全てが繋がり円となって戻ってくる、まさに『フルサークル』なんです」
そう自身のソフビ哲学を語ってくれた! そんな「フルサークル」によって今後、Roger氏がどんなソフビを発表するのか注目したい!


今回の限定版「Mudbelly」で彩色を担当した久保亜沙香氏にも聞いてみました。
「最初に見た時、成型色がラベンダーっぽいカラーだったので、私のカラー=パープルに合わせてくれたのかな? と思いました。すでに成型色がかわいいので、悩んだんですけど、変な色を入れるのではなく、グラデーションになるようにスプレーしてから、メタリックピンクを、ふさふさした毛の造形の部分にポイントとしてスプレーしています。ちょっとマイブームなんですけどシルバーのハイライトを入れてみました」
というもはや玄人はだしなコメント! すっかりソフビの彩色にも慣れ、以前のように緊張することなく、とても楽しいスプレーワークだったと語ってくれた。ソフビアーティストとして確実な成長を感じさせてくれました!


会場でブースを巡って出会った「戦車恐竜 TANK-DAINO」やRoger氏の「Mudbelly」。それは、いずれもメイド イン アメリカで、どちらも日本と同じソフビの製作方法(スラッシュ成型)で生産するMILE HIGH SOFUBIに成型をお願いしていしていた。このMILE HIGH SOFUBIとはアメリカで唯一スラッシュ成型のソフビ工場なのだ。なんと「DesignerCon」に出展していると聞き、代表Paul J氏を直撃しました! 

まずソフビの成型工場を始めたきっかけについてお聞きした。
「これは私の会社です。約9年前から始めました。製作方法を理解し、必要な機材を揃えるのに3年かかりました。そしてその3年後、ようやく製作を開始することができました。それから6年間、ソフビの製造をしています。長年ソフビのおもちゃや模型を集めてて、子供の頃から『ウルトラマン』の大ファンだったことが、ソフビを集めるようになったきっかけです。ビリケン商会のガレージキットをたくさん持っていますが、すべてお気に入りで、とても気に入っています。それもあって、ずっとソフビのおもちゃを作りたいと思っていましたが、どうすればいいのかわかりませんでした。それで作り方を研究し、今に至るわけです。また以前、レジンで作品を作っていたのですが継ぎ目の研磨にうんざりしていたんです。それで繋ぎ目がなく研磨しなくて済むソフビが良いと思ったこともソフビを追求するようになったきっかけです。最初はアメリカで誰もスラッシュ成型でソフビを作っていないので、相談できる人がいませんでした。だから少しずつ自分で解決していくしかありませんでした」
何もわからないところからのスタート……途方もない道のりを経てきたことがうかがえる

会社名の由来は?
「MILE HIGH SOFUBIの名前ですが、Mile Highというのは、私の出身がコロラド州デンバーで、そこは海抜1マイルの高さにあるためMile High Cityと呼ばれているのです。そこから命名しました」


ブースにはMILE HIGH SOFUBIが成型したソフビたちが並ぶ!
「これはウチで成型しているクリエイターさんたちのソフビです。彼らはラスベガスまで来ることができないので、私に委託してきました。だから彼らのために成型し、ブースに並べています。それは自分の能力、何ができるかを示すのにも役立ちます。ほかのクリエイターがソフビ製作を依頼してくれるきっかけにもなるので、なるべくイベント参加するようにしています。ソフビは小さいながらもとてもフレンドリーなコミュニティですから、そのコミュニティでできる限り活動的に過ごしお手伝いするようにしています」


最後に日本について聞くと「日本は大好きなので、何回も行っってます。まんだらけでソフビや、たくさんのおもちゃにお金を使ってしまいましたが、とても楽しいです。そこは素晴らしいモノがたくさんある素晴らしい場所です」とニコニコ。こんなPaul J氏によるMILE HIGH SOFUBIだけに、今後の動向はソフビ好きなら見逃せないぞ!


会場を歩いてて一際目をひいたのがレトロなロボットデザインのソフビが並ぶDreams of Robots。これはカリフォルニア州を拠点とする熟練アーティスト&玩具デザイナーであるMondo Roqu氏のプロジェクト。氏はトップエンターテイメントブランドとのプロモーション的玩具やソフビ界でもその名をよく聞く「Syper7」でレトロな美学と現代的なデザインを融合させたキャラリアを持ちながら、日本の「スーパーロボット」が大好きでこのプロジェクトをスタートさせたという

「これは私が創作したオリジナルキャラクターの『Siege Fortress Iron Berserker』です。1970年〜1980年代の日本の『スーパーロボット』にインスパイアされた、私の新しいキャラクターを紹介するためにソフビロボットラインを作りました。それでKickstarterで資金を募ったんです。無事、目標額を達成できたため、まずKickstarter用に4つのカラーバージョンを製作しました」
※「Kickstarter」とは、クリエイティブなプロジェクトを支援するためのクラウドファンディングプラットフォームのこと


「DesignerCon」での限定品はボディのクリア成型版!

「クリアな胴体とソリッドなパーツは、日本の『レッドバロン』にインスパイアされています。私は長年にわたって多くの『スーパーロボット』からインスピレーションを得ました。『マジンガーZ』など私が本当に好きなロボットです。製作は完成まで1年ほどかかりました。去年の『DesignerCon 2023』に出展した時、Kickstarterを披露しました。そして今年、生産を開始して、まず8月に工場から製品を受け取って、Kickstarter支援者に発送しました。そして今、在庫を販売するために活動しているんです。ソフビはスラッシュ成型で中国製。ソフビ製作経験のある会社・Last Bastion Studiosに依頼しています」

「これは私にとって最初のキャラクターで、さまざまなロボットのラインの一部になる予定です。まだ初期段階なのでリリースしたばかりのこれらを売り終えたら、次のバージョンを製作予定です。このラインは[Siegeシリーズ]と言います。ここでは、さまざまなスタイルのロボットに、さまざまなパワーや戦闘力を持たせる予定です。これはミサイルとメイスを備えた接近戦用で、大きなロケットとミサイルを備えた遠距離射撃用も製作予定です。ほかにも空中戦ロボットも予定しています。これはそんな戦闘ロボットの物語なんです」
Mondo氏のロボット愛とアイデアはさまざまに広がっている模様! 今後のシリーズ展開も見逃せない!!!


会場では次回発売予定のキャラクターも展示。このロボットセンスには、かなり響くソフビ者も多いのでは? 日本とはまた違った感性による、こうしたソフビとの出会いは「DesignerCon」ならではの楽しみだ!


最後エビキヨ先生とMondo氏。彼は本当に日本の「スーパーロボット」好きなナイスガイだった!!

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