「エビ沢キヨミのそふび道」「もしもしこちら編集部」でお馴染み・エビキヨ先生により10周年お祝いイラスト
赤司竜彦氏(メディコム・トイ代表取締役社長)Interview
インタビュー/sofvi.tokyo編集長『そふび道』 ルポマンガ家・エビ沢キヨミ
ーー今年ってsofvi.tokyo10周年なんです(2015年2月1日スタート)。同時に[VAG]も10周年になります。そこで新作を紹介し続けてきたsofvi.tokyoと、今のソフビ界の一端を担ったソフビ作家たちのオリジナル作品を紹介してきた[VAG]。いずれもスタート時はそれを意図したわけではないですが、10年をともに振り返ると、今のソフビ界の現在・過去・未来がみえてくると思うんです。そこでsofvi.tokyoのオーナーであり[VAG]で毎回ソフビ作家のラインナップを担当されている赤司さんにこの10年を振り返っていただければと考えました。よろしくお願いします
よろしくお願いします
ーーまずsofvi.tokyoについて聞かせてください
もう10周年になるんですね。お聞きして初めて気づきました。もともとの始まりは『ハイパーホビー』(徳間書店刊のホビー雑誌/2014年末に1回休刊)さんの休刊ですよね
ーー(sofvi.tokyo編集長は『ハイパーホビー』で世界唯一の新作ソフビ紹介コーナー『そふび道』を1999年より連載)そうでした。私が休刊を知った時、次号用に赤司さんに取材をお願いしていたんですよね。休刊のことをお伝えしたら、赤司さんから「お話ししませんか?」と言われて、お会いさせていただき、そこでsofvi.tokyoの構想をお聞きしたんです
そんなところからでしたね。『ハイパーホビー』は、奇跡の雑誌だと思ってて、1度休刊してその後、雑誌名が変わって1回復活(2015年6月1日発売『キャラクターランド』)し、再び休刊して、今度また『ハイパーホビー』(2017年3月発売)に戻って復活したんですよね。これは多分、雑誌業界でも「過去に前例ないんじゃないかな?」っていう気がしてました。ただ3回目の復活で「良かった……」と思っていた矢先に結局休刊という話を編集部からお聞きして……一番最初に気になったのが、その時点で何回目かのソフビのムーブメントが起きてる中、『ハイパーホビー』で『そふび道』を連載してた編集者が、その時、覚えてらっしゃるかどうかわからないですけど「もう田舎に帰る」とおっしゃったんですよ
ーーはい 、確かにそうでした(笑)
いやいや、この人を田舎に返してしまうとソフビのマーケットの史実をきちんと記録として残していける方がいなくなってしまうのは心許無いぞ……というところがスタートでしたね
ーーsofvi.tokyoのお話は、本当にもの凄くもありがたいお話でした
本当にそうなんです。「私なんて」と謙遜されるのはわかってましたが、若干フィールドが違いますが電人さんもある時期「いやいや『タイガーマスク』なんて、私じゃなくても作れますから」みたいに言われたんですけど「あなたが辞めたらほかに誰が作るんですか?」と、結局シリーズをコンテニュー頂いたこともありました。なんか人って神様から、それぞれ役割が決められてるような気がするんです。だから『そふび道』さんはその役割じゃないとダメでしょう」っていう
ーーsofvi.tokyoを「ぜひやらせてほしい」とお願いして……そこでは、もちろんメディコム・トイさんの新作も紹介しますが、『ハイパーホビー』でやっていた今まで通りで構わないと言っていただいたんですよね
スタートしてからsofvi.tokyoの内容や構成に、私はうるさい事言った記憶はないです(笑)。どこのどなたをフィーチャリングしていただいても何を切り取っても構わない。ソフビのマーケット自体の史実を残せる方がいなくなることだけは避けたいっていうことでしたから
ーー本当に今までビックリするほど自由にやらせていただいてます!
2015年2月1日にsofvi.tokyo公開。当時は誌面ページ構成の「東京そふび道」としてスタート! この形式はVOL.10まで継続。その後、現在のネットニュース形式へ変更して現在に至る
[VAG]については、何度か誌面でもお話させていただいてますが、当時プレステージさん([VAG]販売担当)から「何か企画を?」というお話を頂いて、ちょうどムーブメントとして盛り上がり始めた、ソフビクリエイターたちが作ったキャラクターを、もう少しマスに向けて広げていけるファクターが欲しいっていうところからでした。たまたまsofvi.tokyoと[VAG]のふたつがどちらも10周年というのは、ちょっとビックリしましたね。 私自身はsofvi.tokyoは『そふび道』さんに[VAG]はクリエイターの皆さんに「どう作って頂けるか?」みたいなことだけで、どちらも後ろからちょっとお手伝いしてる感じですから。あとsofvi.tokyoはともかく、[VAG]はこの10年でコロナ禍だったり、原材料の値上がりがあったり、いろんな事があって大変は大変なんですけど、辞めてしまうのは心苦しい思いもあって、なかなか辞めれない。というのも少し前だと木梨憲武さんと(エビ沢)キヨミさんとのプロジェクト……7~8年ぐらい前だったかな、そこで男の子のキャラクター「コッカ」を[VAG]にしたり、PARCOさんと協力して創作あーちすと“のん”さんのキャラクターが出たり、最近だとバッドボーイズの佐田(正樹)さんだったり、いろんな方に参加していただけて色んな方向に広がったというおもしろさがありましたね。本当に境界線がインディーだメジャーだっていう……音楽じゃないですけど、そういった境界線がどんどんぼやけてきて、気がつくと「えっ?」っていう海外アーティストや著名な方も参加してくれたり、全く無名だったクリエイターが、ここからブレイクしたり、色んなファクターとしてのおもしろさみたいなところも出てきたので続けられる限り続けたいですね
ーー確かにすっかりオリジナルソフビの入門編として定着しましたね
最近、第42弾のヒカリトイズさんに「[VAG]ができることがうれしいし、[VAG]以外だったらやるつもりなかったです」みたいに言っていただいて、すごくうれしかったですね。そんな風に皆さんが集って、外に向かって行けるための何かになれればいい……そんなところで気がついたら10年経ってましたっていうところでしょうか
ーー軽く言われていますが、[VAG]が果たしてきた役割は、ソフビ界的にとても大きいと思います。10年前のスタート時は、ソフビがムーブメントを起こしてはいましたが、決して全国区の動きではなかったと思うんです。全国展開のカプセルトイである[VAG]は本当に続くのか? と感じてました。ところが5年経ち、現在11年目に入りました。今はもう当たり前の様に色んなメーカーさんからクリエイターモノのカプセルトイが発売されています。その礎を築いたのは[VAG]なんですよね。通常シリーズで年4回、スペシャル版もたまに発売して……。当然メディコム・トイというメーカーの立場である以上、失敗できないので色々と計算されてると思いますが……よく10年……これは本当に凄いことだと思います
作家さんたちやプレステージさんのがんばりだったり、いろんな所が、いい形でシナジーを生んでくれたという気がします。私が特別な事をやったかっていうと、帳尻を合わせるように裏方仕事をやってただけで全然そんなことない。メディコム・トイ全体の仕事もそうですが、最後に帳尻が合わせられればいい。だから私がどうかでは無く、本当にこれは作家さんやプレステージさんのがんばりだと思います。あとはメディコム・トイ造型チームや生産チームですね。これだけめんどくさいことを、このコストでやってくれてるなと思います。中国工場にも感謝してますし、そんな皆さんのがんばりと努力の集積がこういう形で10年続いて良かったと思います
ーーそうですが、いくらみなさんが「がんばる」と言っても、その場所がなければ、がんばれない。その場所=[VAG]があるから、そこに夢を持った作家さんたちが参加してくれる。結果的にそれが大きな熱量を産み出し、オリジナルソフビの存在を定着させることになりました。sofvi.tokyoでオリジナルソフビを紹介していると良くわかりますが、やはりライセンスモノと比べると圧倒的に一般的ではないんです。そんな状況だったのに今はこうしてオリジナルソフビが隆盛を極めている。作家さんたちのがんばりの要因としての[VAG]は本当に大きいし意味があります!
色々ありましたね。1番最初のキャスティングをどなたにするのか? そんな時期から、ある程度のブレイクスルーを経て、それこそ以前ひなたかほりさんのみでラインナップ出来るようになったり、最近発表されましたがGYAROMIさんのみでラインナップできたり、今までは作家さん、メーカー、流通、生産という、割と内側に向かってのがんばりから、どんどん外に向けて化学変化を起こしてきたという感じがしてうれしいです
ーー[VAG]について毎回思うのが、よくラインナップを揃えられてるということなんです。人気作の2回目3回目が入っている時もありますが、全て新しい作家さんだったりするパターンもあります。また意外なラインナップと言いますか、nopropsさんの「青鬼」やFROGMAN さんの「文春くん」とかオリジナルの作家モノだけではなく、いきなり急な角度から飛び込んできますよね。そこも凄さだと思うんです
最近だと田原俊彦さんの「VALEN」とかそうですね。そこは単純に、例えばインディーズの作家さんだけでやったら、それはそれで小さくまとまってしまうかな? みたいなところからです。編成とか構成を考えた時、ストイックに何かルールを前提にしてしまうと、どんどん内側に向かっていきそうな気がしてしまうからです
ーーその「VALEN」がポンと入って来る。この組み合わせは、まさに仰ったシナジーで、なかなかほかで出来ることではないと思うんです
全国展開できる[VAG]のメリットや、そのモノを多くの方に知って頂くため、いろんな方に入って貰いたいみたいなところからの試作だったりする気がします。びっくりしたでしょ「えへへ」という感じですね。実はまだ公表はできませんが……
ーー(内緒でサプライズラインナップをお聞きする)それものすごく欲しいです!!
そうやって、おもしろがってくださるじゃないですか?
エビキヨ あまり[VAG]とイコールにならないところからポンってくるところが凄いなと思います。意外すぎる、ビックリ!?
田原俊彦さんや「たま」の知久さんとか、このバランス感は、ほかの作家さんたちも、きっとおもしろがってくれると思うんです。
ーーそこは抽出される赤司さんの幅ですよね。それをOKする幅が[VAG]の魅力でもありますよね
ルールからではなく、はみ出ようとする感じ。1986年に発売された有頂天のメジャー1stアルバム『ピース』のヘッドコピーが「We have no message」っていうコンセプトなんですけど、多分「おもしろい」と思ってくださることが1番の意味なんです。[VAG]に関してもそうですね。逆にsofvi.tokyoは本当にお任せして、私はいち読者として楽しんで拝見しているだけなんです
ーーsofvi.tokyoで、そう言って頂けるととてもうれしいです。今はソフビ界の状況がさまざまに広がっているので、魅力のメインというか、例えばマルサンやブルマァクなどのスタンダードなソフビを、ちゃんと紹介していきたい思いがとても強いです
ある時期を境に多様化した気がしますね。特にコロナ以降ぐらいかな? それこそ全く原体験としてソフビを知らない方たちが「ソフビを作りたい!」っていう風になってきてますよね
ーー色んな世代にソフビが広がって、それは喜ばしいです。ただ広がりすぎて、もはやsofvi.tokyoで全部を紹介できるかというと、それは無理だと感じています。なので今のsofvi.tokyoは、ここで新しい作家を紹介するだけでなく、ソフビという存在を知る窓口的な役割として、あとはファンがそこから枝葉のようにSNSなどで新しい作家さんを、見つけて行くというので十分かなと思ってます
すごくアンビバレントなんですけど、新しい作家さんにとって、かっちり宣伝してあげることが本当に幸せなことなのかっていうと、ちょっと違う気がします。好きな人たちに探してもらって、見つけてもらう事の大事さみたいなところって絶対あるはずで、きっとそこから、どんどんシーンの中核に入っていく。例えば、sofvi.tokyoから「何かやりませんか?」とか、「これ記事で紹介させてほしい」という話をした時、それを受ける受けないは作家さんたちの自由です。お声がけしても「いや私は、取材を受けません。紹介もしていただかなくて結構です」というスタンスも基本的に全く問題なく“あり”なんだと思います。結果的にすごく多面的にソフビの世界に色んなスタンスの作家さんがいらっしゃって、だから「いいんだ!」というところに集約してると思うんですよ。そういう作家さんが“好き”っていうのもいいし。sofvi.tokyoで毎回紹介してる作家さんのイベントへ行ってサインしてもらったというのも全然いい楽しみ方だと思います。もうどんな楽しみ方してくれてもいいんじゃないかな。今のソフビのマーケットって、それこそインデューズ的な音楽シーンとすごい似てる気がしてて「GO-BANG’S」や「パパイヤパラノイア」もいれば「ガスタンク」「ラフィンノーズ」もいるぞ!(※それぞれのバンドについては各自調査)みたいな世界ですから
ーー最近、その兆候はますます強くなっていますね。今って大まかに3つにブロックが分かれてると思うんです。かわいいマスコット的なライン、もうひとつがマルサンやブルマァクのようなヴィンテージな怪獣ソフビのライン、そしてそんなヴィンテージスタイルへ作家がアレンジを施したクリーチャー系ですね
色んな人がいていいんですよね。もう誰にも迷惑かけずに作家自身が楽しめて、活動しているならいいんじゃないかな。そして皆がそれで楽しんでくれるのが1番いいんじゃないかなと思います
ーー世代が入れ替わってるのも本当に感じます。私が以前『そふび道』というコーナーをやっていたことはもちろん、もしかしたらsofvi.tokyoすら知らない人もいるかもしれない……。最近、新しいブランドに関しては、基本的にsofvi.toktoの紹介依頼フォームからご連絡をいただいてから、ご紹介させていただくようにしています
そうですね。今のsofvi.tokyoは、紹介してほしい人が「どうやって紹介してもらえるのかわからない?」というフォーマットではない。ということはsofvi.tokyoに載って無い情報は、そのブランドがsofvi.tokyoに紹介してほしくないと考えているか、サイトの存在を知らないかしかない。ただ知らない場合、せめてソフビに興味があるならsofvi.tokyoぐらいは知ってくださいと思いますし、紹介して欲しくないという人は、それはそれでがんばってくれればいい、嫌だという作家さんを紹介してもしかたがないですからね
ーーわかります。以前、色んなブランドのSNSをチェックし新作発表を見つけたら即、紹介願いを送っていたんです。ところが、そうしてある個人ブランドを紹介させてもらった時、それは受注生産だったんですが、想像以上に注文が来てしまい生産でアップアップになってしまった。そのため予定していた次回作がすぐ発表できなかったらしいんですね。それを知った時、個人でこなせる数には限界があるので、紹介して注文数が増えることが、そのブランドにとって決して幸福ではないということを感じたことがあるんです。そういうこともあり、その後コロナ禍もあったりして、紹介依頼をいただいたら紹介というやり方に変えたんですね。最初は、紹介依頼が来るかなと不安でしたが、思っていたより多くて、こうして現在があります。おかげさまでサイトビューも増えているので、全世界規模でソフビが好きなファンには届いているかなと感じています
そうですよね。月刊ビュー数が30万近くまで上がってますよね
ーーはい。広がりは昨年末の「DesignerCon」の取材に行った時、海外の色んなブランドやファンがsofvi.tokyoのことを知ってくれていたので物凄く感じました
sofvi.tokyoも[VAG]もメディアとして、きちんと機能してくださってるのがいち番うれしいですね。ここでお話ししてきたみたいに、時代や歴史を語れるぐらいソフビも時間がたったということなんでしょう。1991年に西村(祐次/M1号代表)さんのマルサン・ブルマァクスタイルソフビの復活辺りから始まって、その後1990年後半に今の流れの最初のソフビブームがあって……だから1991年が多分、起点になるのかなって思うんです。そこから考えて2001年、2011年、2021年、2026年で実に35年……すごい歴史だと思います
ーー確かにそうした歴史があって現在があります。10年前のスタート当時の[VAG]とかsofvi.tokyoとか、今を想像されてましたか?
10年先を予想して物を作ることって昔からしてないんです。ただ時間が経つ中で、いち番いいところにこう変容してってくれるように、プロジェクトや企画なりをブリーディング、育てていくっていうのは、多分[VAG]にしてもsofvi.tokyoにしても、ウチでやってる全ての事に関して変わらない。手塩にかけて育ててもダメになることもあるし、ほっといても育つモノもある。そこは本当に運と縁とタイミングだと思います。ただ本当に[VAG]もsofvi.tokyoも、ちゃんと育ってくれてとてもうれしいです。そんな後ろでニコニコしてるおじさんがいたらそれはボクですみたいな……そんなところでしょうかね
年末年始に開催された「VAG 10th Anniversary 1」
展示された「SERIES1」。左からmeemie「エメーリアン」、ピコピコ氏「ガッキーくん」、ザリガニワークス「ケンタウロス力士」、小夏屋「河童ちゃん」の4種!
ーー最近テレビ番組でソフビ特集が放送されました。それはソフビに結構な熱量があるということだと思いますし実際に感じています。その種をまいてきたのが[VAG]であり、赤司さんなんですよね。今って少しソフビが過剰になり過ぎる中[VAG]は、入門編としてこんなに手軽なソフビはないと思います
いつも「あの定価(500円)で、どうやってまとめてるんですか?」って聞かれるんですが、本当に金額的にはアップアップです(笑)。 多分、物理的には、まとまらないモノをまとめているようなところがあります。年間これぐらいラインを作る、最低何万個作る、だからこの金額でお願いという。毎回毎回「これは何色使って、彩色マスクが何枚だからいくら?」ってやったら絶対に合わない。めんどくさいモノと簡単なモノを含めて「この金額で! お願い」って。本当にプレステージさんもがんばってくださってると思います。10年間定価を変えてませんからね
ーーそこなんですよね。どうしてもシリーズが続くとダレたりしますが、ここまで継続してこれたのは赤司さんのがんばりなんです。だからこそ赤司さんには、今後もやり続けてもらわなきゃいけない責任もあると思います(笑)
本当に多分やんなきゃいけないんでしょう。最初に言った話が上手くブーメランの様に返ってきてしまいましたね。[VAG]はお前しかやる人はいないんだっていう話ですよね。「なんかおもしろいんじゃない?」本当にそういう感じでやりたいですよねと常日頃から思ってます
ーーだからこそ今の[VAG]は赤司さんにしかできないと感じています
本当にありがたい限りです
ーーご苦労だとは思いますが今後もぜひお願いします
はい。おかげさまで来年メディコム・トイも設立30年になるんです。この30という数字には、ちょっと思い入れがあるんです。何故かというと、本当にソフビを始めたばかりの頃、工場見学しようってオビツ製作所さんへ行ったんです。そこで社長さんが「ウチもやっと30年ですよ」って言われたんです。つまり、今から30年前ですよね。だからオビツ製作所さんは、今60年のはずなんです。当時のオビツ製作所さんと同じところまで来れたなって思ってうれしかったんです。なかなか感慨深いですよ。漫画家さんも30年間も描き続けるのは大変でしょうし、バンドも30年続くって大変でしょう
ーー以前[東映レトロソフビコレクション]10周年記念企画でインタビューさせていただいた時、赤司さんは今後の抱負として「30年続いたらおもしろいでしょ」とおっしゃったんです。なぜ20周年ではなく30周年だったのか? 何気に今繋がりました
そうなんです、だから30周年は思い入れありますね。確か経済産業省の資料で会社を始めて30年続く会社は全体の数パーセントで、ものすごく低い確率らしいんです。だからその中に入れたのかって、そういう感じですよね。志半ばで続けられなくなったやメーカーさんもたくさんいらっしゃるでしょうし、ソフビの作家さんも皆さんそうだと思うんですけど、ただ辞めて復活する方もいらっしゃいますしね。作家の仕事は、年齢どうこうという仕事ではないし、 自分が何を出したいのか? マーケットのニーズに合ってるのかどうか? 自分がやりたいことは何なのか? 色んなことが入り混じりながらマーケットでの評価が定まっていく。ちょっと古い話ですけど一度、安楽安作さんがソフビのマーケットから姿を消された後、彼を探して話をする中で復活のお手伝いができたこともうれしかったですしね。きっとまだ、そんな方はたくさんいらっしゃるだろうと思う反面、NAGNAGNAGさんが亡くなってしまったりもしてますからね。色んなことがあるなって
ーーまさに時間の流れであり歴史ですね
それで思い出しましたが、それまで活動していた作家さんが亡くなったりすると、特に著作などいろんな問題が出てきます。意匠や商標に関して、あまり考えずに活動されている方も多いので、最近の作家さんには出来るだけそうした権利関係は自分で押さえておいた方がいいだったり、ご家族がいるなら例えば会社にして家族を役員にすると経費が計上できるよとか、いろんな事をアドバイスしています。当たり前だけど30年もやってると皆いなくなる。それが当たり前なんだけど寂しいとは感じます
ーーそうですよね。だからこそ今、生きている我々でがんばりたいと思います。[VAG]の未来について、何か思い描いてる事があれば教えてください
そうですね、結果的に今回のせりのりかさんの「ケアベア」は、すごくおもしろいいいケーススタディだったと思います。コラボレーションが可能だったのもおもしろかったし、ライセンスホルダーからⒸにせりさん名前を入れるのもOKという話をされたのも驚きました。今、スピンオフの企画を考えてます。そんな発展させるのもひとつのやり方としてあると思います。著名作家の作品なり商品を[VAG]化するというやり方もあるし、[VAG]から出て大きくなっていくパターンもある。多分[VAG]がメディアとして、より理想的に機能してくれることが一番の理想かなと考えています。多分、それ以上でもそれ以下でもない。知名度が上がると、どんどん広がりますし、おかげさまで30年も仕事をやってるせいかで、色んなつながりもできてきたので、その中で、この作家さんだったらこんな事やったらおもしろいかな? とか、おもしろいいファクターで色々と配線をうまく繋いでいける様な役割もできるので 、その辺ですね。本当に特定の作家さんどうこうというのでは全然無く“おもしろい”“いいな”と思う作家さんがいて、その方が望めばっていう大前提ですね。望んでない方にやっても仕方ないし、逆に望まれても例えば今のネームバリューだったり、その人の今のファンの分母が少ないと、中々コネクトしにくいとかだったり。運と縁とタイミングみたいな感じがします。それは俯瞰で見るsofvi.tokyoと同じで、メディアとしての機能が、もっと多くの方に認知して頂けて、いろんな方が「sofvi.tokyoで取り上げて欲しい」みたいになると。もっとメディアとして広がっていくので、そんな風になってくれるとうれしい感じですね
ーーsofvi.tokyoを、もっともっといろんな方に知っていただけるようがんばります!
当たり前ですけど皆、最後は死んでしまうんです。本当に10年20年先は、もうわからない。だからこそ年を取れば取るほど今の縁は大事にしとかないとなと思います
ーー本日インタビューさせていただいて思いますが、やはり今「ソフビで何かやろう!」と考えた時「何かできる」という期待があるから赤司さんの元にいろいろ集まってくるということだと思いました
それは凄くありがたいですね。佐田さんとのプロジェクトが良い感じで跳ねてくれてたこともあって、吉本芸人さんからソフビを作りたいってお話をいただいてます
ーーちなみに赤司さんは、ソフビをコレクションされていますよね。凄そうですが、どうされてるんですか?
そうですね。私はソフビと洋服は恐ろしい量があります。ですから気が早すぎるかもしれませんが「もし私がいなくなったら価値の分かる人に扱ってもらいたい」という話をしています。確か、この世のあらゆる食べ物を食べ尽くした凄い美食家がいて、その遺言が美食家仲間に「俺が死んだら俺を食って欲しい」だったらしいんですよ。その気持ち、凄くすごく分かるんです。洋服もソフビも、そういうマインドですから、出来たらアーカイブを作ったり、分析して何か書いてくれるとうれしいみたいな感じですね
ーーそれもsofvi.tokyoの使命として記録させていただきます。私も命尽きない限りsofvi.tokyoとして新作を紹介し続けたいなと思います
ぜひよろしくお願いします
ーー今日はお忙しい中、本当に色々ありがとうございます
(2025年3月11日/メディコム・トイ本社にて収録)
sofvi.tokyo&[VAG]10周年記念インタビューいかがでしたか? 主に[VAG]の内容でしたが、オリジナルソフビの魅力を世界に拡散させてきた大きな存在なので、このインタビュー内容は必然的だったと感じます。そんな[VAG]とほぼ同時期にメディアとしてのsofvi.tokyoがスタートとしたことは、大袈裟にいうと、とても運命的だったとも思います。世界唯一の新作ソフビ・メディアとしてsofvi.tokyoは、今後も新作ソフビを紹介し続け、ソフビ界への入り口としての役割を継続するでしょう。それは多くのファンをソフビ者として果てしなく深く、どこまでも長い『そふび道』へ誘うことになると思います。今後ともsofvi.tokyoへのお付き合いよろしくお願いいたします!