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「世にも稀な、すぐれた造型作家」である安楽安作氏の活動史と復活の軌跡を辿る!

赤司竜彦氏(メディコム・トイ代表取締役社長)からいただいたコメント「世にも稀な、すぐれた造形作家」がピッタリな安楽安作氏。COLUMNでも紹介の通り、2004年~2008年のわずか4年の活動を経て、国内外で高い人気だったにもかかわらず、ソフビ界からフェイドアウトしてしまったのだ。そんな氏が数年の沈黙を破ってソフビ界に戻ってきた! そこで今回は「安楽安作とはどんな人物なのか?」を紹介すべくインタビュー。「ソフビ界フェイドアウトの理由」や今回の復活劇まで、余す事無く語っていただきました! 「安楽安作の大怪獣図鑑」とあわせてご覧ください!

「世にも稀な、すぐれた造型作家」である安楽安作氏の活動史と復活の軌跡を辿る!

1.プロフィールについて

―アニメ作家として本格的に開始された年と、そのきっかけとなった出来事などがあれば聞かせて下さい。
1999年頃からネットで『ぱんだ係長』のアニメを作ってました。怪獣が好きだったので『大怪獣ゴガメジラー』のアニメを作り、最初はモノクロで音なしだったので、後にカラーで音声をつけて作り直しました。

―本格的な活動以前より、様々な活動はされていたと思います。それはどのような活動だったのでしょうか?
高校の時にディズニーのアニメ『ピノキオ』を観て「アニメを作りたい!」と思い「漫画家になってアニメを作ろう!」という目標をたてました。その後『サザエさん』の製作会社(エイケン)でアニメーターになり、漫画では『コミックボンボン』(講談社刊)掲載の『くらやみ男爵』、『ガロ』(青林堂刊)掲載の『すてきなほたるいか』で賞をいただきました。玩具雑誌『cool toyz』(ワニブックス刊)で『THE IKARENBOW』も連載しました。その後、ネットでのアニメーション発表に移行します。動くアニメの方が漫画より、多く伝えられると思いましたし、ネットでは自由に発表できました。

―アニメは安楽安作動画社という屋号で発表されていました。その名前の由来を聞かせて下さい。
安楽安作の名前は落語の開祖・安楽庵作伝に由来します。作伝さんは秀吉公のお伽衆で飛騨の金森長親公の弟とされ、私の祖先にあたります。何かの縁なのでご先祖の名前を使わせてもらいました。

―そんな中で、どのような経緯からソフビを制作されるようになったのでしょうか?
アニメのゴガメジラーをソフビにしたくて、自分で作ることにしました。立体は初めてで何も分からず苦労しました。

―立体の経験などあったのでしょうか? どのようにソフビ制作を覚えたのでしょう?
全く経験ゼロでした。知識は全て『ホビージャパン』(ホビージャパン刊)の立ち読みです(買えよ)。立体造型、型どりは独学です。ソフビに関してはアトリエG-1で教えていただきました。師から「動物・恐竜の骨格を勉強して参考にしなさい」と言われたことが心に残っています。

―好きだから製作を始められたと思います。そんな安楽さんにとってソフビの魅力や思い入れなどありましたらぜひ聞かせて下さい。
昔からおもちゃが好きでした。ソフビと怪獣消しゴム。『ロボダッチ』にガンプラ。その後は『SDガンダム』と『ネクロスの要塞』。大人になっても色々買ってました。子供のころは、ポピー[キングサウルスシリーズ]の時代で、おもちゃ箱に一杯ありました。あのシリーズのガラモンは、猿の様で恐かったです。大人になってからホビーショップでM1号様のマルサンタイプ、ガラモンを見て「何じゃこれ、カワイイー」と思ったのがきっかけでした。欲しかったけど手に入らなくて。しばらくしてブルマァクさんが、赤いガラモンを復刻されたので買いました。ブルマァクのガラモンいいですよね。迫力もあるし、持った時の“しっくり感”がここち良い。リアルなガラモンは正直、恐くて苦手かも。マルサン・ブルマァクのガラモンの方が好きです。ブルマァク様のガラモンは、首がのびてると言われますけど、あの“びよーん”とのびた感じの首、あった方がかわいい。“バスッ”と真っすぐに切ったガラモンより、“びよーん”の首のブルマァクのガラモンの方がボクは好きだなぁ。「これでいいやん。どうせボク似てないし」みたいな……首が伸びてるって「あれは本当はガラモンじゃなくてピグモンです」ってことじゃないよね。不安になってきた。ソフビは集め出して、置き場に困るようになりました。整理するけど減らない。悪いクセで、好きなソフビだと何個も買ってしまいます。オークションに安く出てると捨て犬のようで引き取ってしまって「それ同じの家に20個あるやん!」みたいな。

―オリジナルとしての代表作がありましたら理由と共に聞かせて下さい。
既存のものだとゴガメジラーでしょうか。最初のモノで「勢い&情熱」だけで作ったので造型物としては、恥ずかしいモノです。ゴガメジラーは、ゴジラ、ガメラへのオマージュ・リスペクトのつもりでネーミングしました。しかし今、これは自分勝手な思い上がりであったと反省しています。自分がされたら良い気分はしません。オマージュ・リスペクトなんてゴジラ・ガメラのスタッフには届きません。パクられたと思われるだけだと。パチモノは今後卒業、自分の評価は下げたくないですから今後はオリジナルでいきます。新作のぽこぽんやガラチオンは、ただのタヌキと竜。素朴なテーマですが、ボクなりのオリジナリティと愛であふれた作品に仕上げたつもりです……と言いながら、実はゴガメジラーはリメイク新造型がスタンバイしています。メディコム・トイ様には、すでに原型を納品してあります。これがボクの最後のパチモノで“パチ納め”です。

2.趣味趣向などについて

―最初に子供の頃好きだった作品の思い出などありましたら聞かせて下さい。
3歳上の兄が怪獣・妖怪が好きで、その影響で怪獣好きになりました。家にはポピーの怪獣ソフビとケシゴムが沢山ありました。水木しげる先生の妖怪図鑑、東宝円谷の怪獣図鑑が何冊も並んでいました(その兄は今、一児の父でAKB48が好きだそうです)。一番、影響を受けたアニメは、先ほども言った通りディズニーの『ピノキオ』です。とても感動しました。造型で影響を受けているのは、マルサン、ブルマァクのソフビです。どれも素晴らしい。

―現在ふりかえってみた時、そうした思い出の何かが「今の自分の作品に活かされているな……」と思うことがあったりしますか?
造型する上でマルサン、ブルマァクは永遠のお手本です。学ぶべきことは多いです。表面的なことだけでなく、全体のバランス、中に込められたテーマのようなもの。最新作や待機中の作品では、そういうことに留意しました。

―現在も様々な作品をご覧になっていると思います。今はどのような作品が好きですか?
映画館に行かなくなりました。DVD、ネットカフェで映画が見られるからかなぁ。映画よりゲームの方が好きかも。『ドラゴンネスト』というオンラインゲームが好きです。目が疲れるからゲームは程々にしないといけません。健康と仕事が第一ですから。

―今お好きな作品に触発されたりしますか? またそれによって制作された作品などがあれば教えて下さい。
映画に登場するモンスターを見て影響を受けることもあります。日常でもフクロウの目を見て、ササカマビクチーの目を大きく作り直したり、散歩中に見た犬の横の姿で「このぐらいの頭と首のバランスが必要だ」と発見したり。

3.デザインや造型、彩色へのこだわりについて

―オリジナルのキャラなどを創造する時、そしてそれを造型する時、気をつけていることやこだわりなどを聞かせて下さい。
マルサン、ブルマァクの素晴らしさは言うまでもないのですが、それに捕われて作っても失敗してしまいます。師に言われた「動物・恐竜の骨格や筋肉を参考に」の言葉がとても大事だと思います。リアルな部分から、おもちゃとしてのデフォルメ、簡略化してのマルサン、ブルマァクの基本形まで引き算して近づける。あと先ほど言った通りパチモノは卒業。「オリジナルの安楽」でなければメディコム・トイ様に申し訳ない。

―彩色で気をつけていることやこだわりなどを聞かせて下さい。
マルサン、ブルマァクの塗装を参考にしていましたが、胸の手術を受け、健康上の理由からエアブラシを使えなくなりました。今後、彩色はメディコム・トイ様にお任せすることになります。マルサン、ブルマァク塗装に捕われずリアルな配色、例えば牙、角、ツメはアイボリー、ドライブラシ、汚しも造型によっては良い商品になると思います。

4.メディコム・トイとの関係と新作について

―しばらく活動されていませんでしたが、それはどうしてだったんでしょうか?
高校のころから原因不明の体調不良が始まりました。何もしないのにとても疲れ、若い頃から横になっていることが多かったです。年々酷くなって、数年前に寝たきりになってしまいました。パーキンソン症候群と診断されましたが、2年前に病状が改善し、後遺症は残りましたが、とても体が楽になりました。そこで「新しいことに挑戦しよう」と思い、人形のアニメを学びに1年間、東京へ行きました。それ以前、体調が悪かった6~7年は、細々と個人の海外コレクター向けの販売をやっていました。日本人は「ウルトラマンだから、ゴジラだから」買う。海外の人は「奇麗だから、カッコイイから、可愛いから」買う。日本人はアフリカ人に対して「腰ミノにヤリ持って、ターザンみたいに鹿、追っかけてる」イメージがある。でも実際はみんなPC、携帯を持ってて近代化してる。外国人は日本に「サムライニンジャいる」と思ってたりする。「サムライ、ニンジャ、どこデスカ?」って。「そんなものいないよ」って言うと「ソウデスカ、ドコに行っタラ会エマスカ?」って言う。「どこにもいない」と答えると「えっ伊賀の忍者屋敷に行ったらいるよ」って。「あほか。あれテーマパークの従業員やろ。水遁の術どころか平泳ぎも怪しいわ」。アフリカにターザンはいないし、日本にサムライ、ニンジャはいない。互いのそのイメージでも害はない。「ニンジャ、シュリケン・チョンマゲ、ハラキリ」と日本のイメージはそれでもかまわない。むしろその方が観光に来てもらえる。インド人が日本のカレーを「これは美味いがカレーじゃない」と言う。インド人は何にでもスパイスを使う。日本の醤油みたいに。日本人には、インド料理の「カレー」と「カレーでないもの」の区別がつきません。逆にインド人は日本の「すき焼き、肉じゃが、いもの煮ころがし」の区別がつかんでしょう。全部、醤油料理。区別出来たら、もはやインド人と違う。立派な日本人。帰化したらいい。文化の違いは、現実とイメージの大きなギャップを生みます。ボクのソフビを買った外人さんが「ウルトラマンの怪獣ね。スバラシー」、「いいえ、ただのパチモノです」。別に害が無いなら、版権モノだろうと、パチモノだろうと喜んで満足してくれるならそれでいい。

―その間も立体などの創作活動は続けられていたのでしょうか?
体調が悪かったので2008年に金型を作った後、新規で作っていません。ただその間も原型はこつこつ作っていました。今回それをメディコム・トイ様に全て預けました。

―メディコム・トイさんとの関係は、どのようなきっかけだったのか経緯を教えて下さい。
版権モノのアイデアが結構あります。自分が欲しいのに誰もやらない。そこで赤司様(赤司竜彦/メディコム・トイ代表取締役社長)に「版権モノをやりたいから手伝って欲しい」と手紙を書きました。人形アニメを学んだ東京での1年は、私にとってとても辛い経験だったので故郷に帰るところでした。そしたら「帰る前に一度お会いしませんか?」と赤司様に言っていただき、4月9日に会って頂きました。せっかくなので、たぬきのぽこぽんと、東京で作った竜を2匹を持って行ったところ、赤司様にとても気に入っていただき「ウチで商品化しましょう!」と言ってもらえたんです。失意で東京を去る直前だった私にとって、これはとてもうれしい出来事でした。「東京に出てきたのも、竜を作ったのも、決して無駄ではなかった」と大喜びで故郷に帰ることが出来ました。

―新作は現在製作中の人形アニメからとお聞きしました。その人形アニメは、どのようなきっかけから製作されようと思ったのでしょうか?
東京へ出て人形アニメを学ぶ過程で、アニメ用に作ったのが2匹の竜の人形でした。

―人形アニメの製作コンセプトなどあったら教えて下さい。作品はどこで公開されるのでしょうか?
タイトルは、人形アニメ「流輝星」です。鬼の酒呑童子と竜2匹が対決する怪獣人形アニメ-ションで、たぬきのぽこぽんも登場します。公開については赤司様から「映画会社との繋がりがあるから、出来次第、配給などのお手伝いが出来るかもしれません」と言って頂きました。「DVDの販路もあるから」と心強いです。良い作品を作らないといけません。人形もアニメも未発表、未完成のまま故郷へ帰る直前に赤司様に拾って頂きました。

―登場する2匹の竜のデザインや造型についてのこだわりを聞かせて下さい。
2匹の竜は、赤竜のガラチオン、青竜のリュウキセイです。コンセプトは「レイ・ハリーハウゼンが、もしチャイニーズドラゴンを作ったら?」で、そこにマルサン、ブルマァクのテイストを加味して仕上げました。この「もしハリーハウゼンが~」をシリーズ化しようと思っています。「もし~」って、ドリフのコントみたいですけど(フジテレビ系列放送、ザ・ドリフターズ主演のTVバラエティ番組『ドリフ大爆笑』の1コーナー「もしもシリーズ」のこと)。次は何作ろうかな。「もしハリーウハゼンがゴジラを作ったら」……あっパクリになってしまった。ダメだこりゃ。たぬきのぽこぽんは、有名歌手の歌に合わせて踊っている動画サイトのメインキャラクターです。アニメと同じ時期に作ったので、何年も前に原型は出来ていたけど、未発表だったモノのひとつです。動物ソフビは、普通もっと頭を大きく、体を小さく作るのですが、今回はマルサン、ブルマァクの人形と並べてほしかったから、マルサンのブースカやカネゴンなどのバランスで作りました。今までで1番バランスが良い人形だと思います。

―久しぶりにソフビを発売されることについていかがですか?
うれしいです。ぽこぽんの商品化のため、久しぶりにワックスを触りましたが大変な作業で、久しぶりに職人らしい仕事をして目も肩も疲れますけど充実して楽しいです。健康上の理由から、多くの作業をメディコム・トイ様に助けていただいて、やっと商品化できるので、とても感謝しています。

―それでは最後に今後の活動の方向性や希望などありましたら聞かせて下さい。
既存の金型は、全てメディコム・トイ様に預けました。新カラーで順次復刻していただけるそうです。新規金型は、会談の時に赤司様に見ていただいた、たぬきのぽこぽん、赤竜ガラチオン、青竜リュウキセイを商品化していただく事になりました。それ以外にも未発表だった先述のたぬきや、竜の他バージョンちがいなど含め15種程も全て預けました。復刻と合わせて、毎月1~3商品のペースで発表されるようです。それから版権モノもやりたいです。そのために赤司様に会いに行ったのですから約束は果たさないと。今までひとりでやってて考えも狭く、閉じこもりがちでしたからメディコム・トイ様には感謝しております。赤司様とソフビ化を手伝ってくれている方には足を向けて寝られません(今日から北枕で寝るわ)。せっかくメディコム・トイ様から多くのサポートを受けているので、その分を人形アニメや原型作りに注力しようと思っています。新規でアニメ用の酒呑童子も作るのでそれもソフビ化したいです。
(6月にメールにて収録)

「世にも稀な、すぐれた造型作家」である安楽安作氏の活動史と復活の軌跡を辿る!
↑先日開催された「MEDICOM TOY EXHIBITION ’15」にて展示された安楽安作ブースの様子

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