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「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてイラストレーター&ソフビ活動を紹介! ひなたかほり氏Interview

「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてイラストレーター&ソフビ活動を紹介! ひなたかほり氏Interview
大好評「エビ沢キヨミのそふび道(第2章「立志編」ひなたかほり編/File:28~File:30)」はいかがでしたか? ここではイラストレーターとして活躍するひなた氏のキャリアを改めて振り返って頂きました。すると幼少期から全くブレずに一貫する世界観や、自然の流れの中で自分が欲しいモノを追求するという、思った以上にストイックな創作スタイルが浮きぼりに!そのやわらかなイメージから「ソフビ界のなんてったってアイドル!」と勝手にお呼びしていますが、その内側は実に芯の通ったクリエイターというひなた氏を感じてください!
インタビュアー■『そふび道』

1/プロフィールについて

ーー本格的に活動開始された年とそのきっかけとなった出来事があれば教えてください。
本格的に活動を始めたのは多分2009年です。もう10年ですね。2008年に「第1回モンチッチドレスデザインコンテスト」の「イラスト部門」で「最優秀モンチッチ賞」を頂いて、このままクリエイターになれたらうれしいなっていう気持ちが芽生えたんです。
ーー意識し始めたきっかけだったんですね。
クリエイターになりたいっていうのはその前から思っていてコンテストを受けたんですけど、節目としてその賞を頂けたのは大きかったですね。そこで何もない状態でしたら、もしかしたら諦めて就職の道を選んでたかもしれない。でもここで賞を取って「クリエイターになれるのか?」というと、やっぱりあてがあったわけでもなければ、足がかりも何もない状態でした。それを打開するきっかけになったのが2009年の「FEWMENY AWARD」でファイナリストに選出されたことでした。そこからFEWMANYさんで個展をさせて頂いたり、そのご縁から色んなお仕事やコラボ企画に参加させて頂くようになったんです。
ーーなるほど。ちなみにそれ以前から色んな活動はされたと思いますが、それはどのような活動だったんでしょうか?
小さい頃からモノを作ることは大好きでした。大学生時代は、作った雑貨などをレンタルボックスに置かせてもらったりもしていました。それは当時、渋谷にあったカントリーテイストな木の温もりのある「月箱」というお店で「自分の世界観と合うな」と感じたんです。でもその頃は「売ろう!」という感じではなく趣味の延長で、自分のイラストを使ったポストカードやメッセージカードを作ったり、手作りのブローチなどを作って置いていました。
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↑世界観が統一しているひなた氏のお仕事場
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↑お仕事場にあるドール

2/ソフビとの出会いについて
ーーひなたさんは、イラストや雑貨の印象が強いと思うんです。それがその後、立体も制作されるのですが、それはなぜだったんでしょう?
私の場合、立体を作りたくてソフビの世界に入ったわけではなくて、たまたま日本人の女性イラストレーターを対象にした怪獣デザイン企画があって、そこに参加したことがきっかけだったんです。ただソフビについては全く知らなかったわけではなく、FEWMANYでも立体作家さんはいましたから、そういう世界があることは知っていました。ソフビを製作されているメーカーMONSTOCK!!さんとも交流があって、MONSTOCK!!さんの展示に参加させて頂いたりもしていたのでソフビには触れていたんです。ただ私の作風的に最初は「どうだろう?」と感じていました。ソフビだと怪獣など、強くて硬いイメージだったので、私の作品の場合、どちらかというとソフビよりお人形だったり、ぬいぐるみだったり、やわらかい素材の方が向いているかもと思って「自分の作品をソフビに!」というイメージがなかったんです。
ーーそもそもひなたさんが怪獣デザイン企画に参加したのは、どういう理由からだったんですか?
当時から仲良くさせて頂いていたイラストレーターの先輩の照紗さんからお声掛け頂いて「おもしろそう」って思ったからでした。
ーー怪獣をデザインすることに抵抗はなかったんですか?
その時はもうありませんでした。怪獣ってモンスターですよね。私の描く動物たちも結局「モンスターだな」って思うようになったんです。怪獣からは少しずれているかもしれませんが、動物が洋服を着て生活したり、植物も動いたり話したり。もうモンスターじゃないですか?そう考えると怪獣も私の世界に登場しても全然おかしくない!だから「私の世界の怪獣はどんな怪獣かな?」って考えるようになって……いつも森の中でひっそり暮らしてそうな動物たちの世界を描いているので、そこに馴染むような怪獣……これだったら楽しくデザイン出来ると思いました。怪獣デザイン企画は副賞がソフビ化だったので私が「こんな怪獣フィギュアを部屋に並べたいな」って思いながらデザインしましたね。
ーー立体への憧れがないわけではなかったんですね。
もともと私もフィギュアコレクターなので、立体にはとても興味はあったんです。ただ自分の作風を考えた時「ソフビとはずれがあるのかな……」と思っていただけで。でも今になって考えてみれば、「少し違うかも……」って思っていたのが不思議なぐらい、振り返って見ると「モンチッチ」や「シルバニアファミリー」、「ジェニー」など好きだったものはみんなソフビ!
ーー実は周囲にはソフビがあふれていたという。気付かないうちに自然に馴染んでいたのかもしれませんね。そして怪獣デザイン企画に出品したキノコの怪獣「キノラ」がソフビデビュー作になるんですよね。ただ次作の「MORRIS」が出来るまでひなたさんはその後、1年〜2年ぐらいソフビから離れますよね。それはなぜだったんでしょう?
立体は作りたかったのですが、ソフビはたまたま企画の流れでデビューしてしまったので、1回ソフビにとらわれずに作りたい立体の作品を作ってみようと思ったんです。そこでその後、レジン製のフィギュアを発売したんです。ただこれが「やっぱりソフビだ」って思い直すきっかけになるんです。つまり海外展開するために持ち運ぶとレジンは重いし、壊れやすかった(笑)。
ーーえらく実務的な理由だったんですね。確かにレジンより、ソフビの方が壊れにくいですよね(笑)。
それにもともと着せ替え人形が好きなので「色んな洋服を着せたい」と思った時やっぱりソフビがいいなって。ソフビは組み替えることで簡単に着せ替え人形にできるんです。それで改めて「ソフビを作ろう」って決めました。それからソフビの製作には元手もかかりますし、続けていかなければいけないので「本当にソフビが作りたいのかどうか?」きちんと自分の中で答えを出したいと思いまして……継続していく覚悟を決めるまでに、すこし時間を置いた感じでした。例えばレジン製のフィギュアなら自分で複製するから、少数を作りたいタイミングで製作出来ます。でもソフビの場合、工房に成型してもらうから、工房のスケジュールという大きな流れに組み込まれた時、工房側のことを考えると継続的に大量に制作できる作家でいたい。時々少数のみ成型してもらうのは難しいんです。また多く成型が上がってきて、それだけの数の作品を作るとなると、やっぱり生活時間の大半をかけることになります。「それでも本当に作りたいか?」という答えを出すのにちょっと時間がかかりました。
ーーなるほど……それで答えが出たのが去年なんですよね。
正確には一昨年の年末ですね。「MORRIS」でソフビ再デビューしたのが昨年秋だったんですけど「またソフビで!」と決めて、原型制作から金型が完成するまで実は1年ぐらい時間がかかってます。
ーー「MORRIS」の原型は、ひなたさんが制作しているんですよね?
レジンフィギュアをつくる際に、FEWMANYで知り合った先輩で、原型師さんであるフクダケンジさんに教えてもらいながら作りました。ただソフビにするとなった時に、レジンだったら4パーツで成型できるけど、ソフビの金型ではこれだと成型出来ないからもっとパーツを分けないとダメという問題が出てきます。また、「手も動かせるようにしたい」「ボタンも別パーツでつけたいから原型からはずしたい」など希望もいろいろと出てきました。そんな修正作業をしなければいけない時期に、メディコム・トイさんからリリースされる絵本の執筆中で。ご相談したら、メディコム・トイさんのスタジオが私の作ったレジンMORRISをスキャンして、データ上で修正のお手伝いをしてくださったんです。その分、絵本に集中してくださいって(笑)。その後もいろいろな問題が出てきて、ソフビの成型をお願いしているジャングルさんに修正のお手伝いをして頂いたり。本当に1年間たくさんの方のサポートを頂いて出来上がりました。
ーー再デビューにはそんなに時間がかかっていたんですね。やはり今のソフビの代表作というのはこの「MORRIS」になりますか?
ほかに「KINORA」や「POOKA」もあるのですが、こちらは原型を原型師さんにお願いしているので、わたしの代表作といったらやっぱり「MORRIS」ですね!
「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてイラストレーター&ソフビ活動を紹介! ひなたかほり氏Interview
↑今や国内外で大人気の「MORRIS」!
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↑ソフビデビュー作の「KINORA」
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↑最新作の「POOKA」。今後どのような展開になるのか気になる!

3/趣味趣向について
ーー次に趣味趣向的な部分をお聞き出来ればと思います。幼い頃好きだった作品などありましたか?
本当に家であそぶのが大好きだったので好きなモノは沢山ありましたけど、1番好きだったのは着せ替え人形だったかな?
ーーそれは「ジェニー」的な?
「ジェニー」だったり、着せ替え人形とは言わないかもしれませんが「シルバニアファミリー」もそうですし、とにかく洋服を着てる子達が好きでした。自分で洋服を作ったりしてましたね。
ーーその時も今のような世界観だったんですか?
どうなんでしょう……でもカントリーテイストというか、ナチュラルテイストというか……。「ジェニー」もヨーロッパの田舎の女の子が着てそうな、赤毛のアンのような格好をさせていました。やっぱり幼い頃から、好きな世界観は確立されていたかもしれないですね。
ーーヨーロッパの田園風景などの世界が好きになった理由は何かあったんですか?
好きって思うのにあまり理由がないというか、とにかく魅かれてしまうんですよね……。改めて思い返すと、本当に昔から好みが変わってないです。
ーー以前、ひなたさんのお父さんが日曜画家で、風景画を描くため幼い頃、よく色んな場所へ連れていってもらったとお聞きしました。その体験が理由になっているのでは?
確かに色んな所へ連れて行ってもらいましたが、それはあまり関係ない気がします……小さい頃はヨーロッパとか海外には行ってなかったですから(笑)。
ーーとなるとヨーロッパ的な田園風景への憧れって、例えば「名作劇場」のアニメだったり、少女マンガからの影響だったりしたんでしょうか?
小さい頃から好きだったもののひとつに『世界名作劇場』がありました……そっか、そうですね!森だったり、田園風景だったり、レンガの街並みだったりとの出会いは世界名作劇場だったかもしれません!
ーーひなたさんの場合は、そんな思い出が完全に現在の作品に活かされていますね!
もう完全に活きてて、すべてが繋がっていますね。やっぱり「着せ替え人形が好き」という所から「色んな服を着せたい!」という気持ちで服を着る動物を描いています。「何を立体で作りたいのか?」と考えた時、夢のひとつに着せ替え人形を作ることがありました。
ーー「MORRIS」のコートは立体として造形されています。ひなたさんの本当の理想は、まさに「シルバニアファミリー」のような感じで、洋服は完全に別にしてソフビに着せたいということだったんですか?
最初の理想はそうでしたね。でも「MORRIS」は、色変えで色んなコートを着せることが出来たので、実はいわゆる着せ替えでなくとも、こうすればソフビでも出来るって気がついたんです。それに「MORRIS」のボタンを別パーツにしたのは、ボタンがない状態ならコートに絵を描いたり柄を描いたり出来るって考えたからなんです。お腹の部分にポケットを描けばパーカーにもなる。いろんな洋服が着れるという意味で、ボタンを造型に含めなかったんです。それも「MORRIS」の特徴のひとつです。
ーー素材のミクスチャーというのが、ひなたさんならではのソフビの作り方なんですね。
もともとソフビの世界の作家ではなかったからこそ、「ソフビとはこういうもの」という感覚がなく自由な発想で作ることができたのかなと思います。
ーーそんなひなたさんですが今現在で影響を受けている好きな作品ってあったりするんですか?
あります!それは幼い頃から好きだったモノたちの延長線上で、大人になってから出会った作品で、もう100年ほど前にイギリスで活躍されていたケイト・グリーナウェイという女性イラストレーターさんの絵本です。学生の頃、銀座のアンティーク市で、その絵本と出会って一目惚れをしてしまって。当時は印刷技術も発達していなかったので、すべてのページが多色刷りの木版で!繊細な線や色は今の印刷では絶対に出せないもので、もう釘付けでした。ただそのアンティークの絵本は、かなり高額で学生だった私には手が出せなかったんです。私がずっとその場を動かないから店員さんも見かねて「ちょっとおまけしてあげる」と言ってくださったのですが、それでもムリな金額で……その時は泣く泣く諦めました。それからケイト・グリーナウェイがとても気になるようになりましたね。
ーー結局、絵本は手に入れたんですか?
社会人になってから、また出会った時、ようやく手に入れました。雰囲気だったり世界観は本当に影響されてます。だから今みたいな質問で真っ先に思い浮かぶのはケイト・グリーナウェイですね。
ーーそんな現在受けた影響から、何か制作された作品などがあれば教えてください。またそれはソフビに活かされたりしていますか?
直接作品に活かされているというのとは違うかもしれないですけど、自分が制作で迷ったりした時に「そうだ、この世界へ行きたかったんだ!」って再確認させてくれる存在ですね。自分が進む先を示してくれる。それから、直接活かされてることもあって、没後100年以上経ってて著作権はフリーなので、構図やポーズやお洋服を参考にして作品を描いたりもしています。
「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてイラストレーター&ソフビ活動を紹介! ひなたかほり氏Interview
↑ひなた氏のベースとなっているケイト・グリーナウェイの絵本

4/キャラクターなどの創作する時のこだわりについて
ーーひなたさんにとってのベースの確認がケイト・グリーナウェイなんですね。そんなひなたさんがオリジナルのキャラクターを創造するときに気をつけていることやこだわりなどを聞かせてください。
やっぱり自分の作りたいものを作るということですね。例えば「こうした方がトレンドかな?」とか「こうした方がたくさんのひとに受け入れてもらえるかな?」とかいろいろ考えてしまいがちですが、どう評価されても……もしかしたら誰も手にとってくれなくても自分が心から愛せる作品を作りたい。今までもまわりに影響されずに自分の世界観を保ってこられたのは、結局自分の好きな作品しか作っていないからだと思いますね。
ーーそして悩んだ時は、ケイト・グリーナウェイの絵を見るという(笑)。
そうです。「私はここだ!」って(笑)。
ーー次に、立体を制作される時、その時のこだわりとか気を付けていることってありますか?
まだソフビに関しては、実質「MORRIS」しか制作してないですから、まだなんとも言いようがないですが……
ーーその「MORRIS」の時にこだわった部分はありましたか?
先ほど言ったように、ソフビにする際、自分で作った原型をメディコム・トイさんにスキャンして頂き、分割作業の他にも、データ上で左右対称にしてもらったりとか、毛並みも足してもらったりとか、色々調整してもらいました。ただ、結局「なんか違う……」と感じてしまうことが多かったんです。
ーーそれは具体的にいうとどういうことだったんでしょう?
生きている感じがなくなってしまうというか……どんなにいびつでも、手作り感を残したくて、左右非対称に戻して頂いて、データを立体で出力して頂いてから毛並みなどは自分の手で彫らせて頂きました。
最終的にこだわった部分ということというと、その手作り感ですね。
ーー確かにデジタルよりひなたさんの世界観はアナログが似合ってますよね。そして彩色で気をつけていることやこだわりなどあれば聞かせてください。
色のこだわりは、シックな落ち着いたイメージでまとめたいなといつも思ってます。あまりビビットな原色だったりは使わず、全てにちょっと茶色が混ざったようなくすんだ感じ。例えばグレーも黒に白を混ぜただけのグレーじゃなくてベージュがかったグレーとか。真っ白も使わずに、白いところはオフホワイトに。そこはこだわってます。
ーーそのお話やひなたさんの世界観を考えると、自然にあるカラーということなんでしょうか?
でも自然のカラーは結構ビビットなカラーもありますよね(笑)。色についてはセピアがかった色という方が近いかもしれません。
「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてイラストレーター&ソフビ活動を紹介! ひなたかほり氏Interview
↑この世界観がひなた氏の全てなのだ!

5/ソフビの魅力と今後について
ーー改めてひなたさんの感じるソフビの魅力について教えてください。
作り始めてから「ソフビってこんなことも出来るあんなことも出来る」って気づくことがたくさんあって!たとえばクリア素材にして中にまた見せたいものを入れられたり、暗い場所で光るタイプにもできたり。幅広くいろんなことが出来る素材だと思いました。可能性がたくさんある!というのが1番の魅力ですね。
ーーわかりました。それでは最後に今後の活動の方向性や希望などありましたら聞かせてください。
これからも、好きな作風で作りたいものを作り続けていけたらいいなと思います。いつも自然体で、はっきりと目標は掲げずに、その時その時でおもしろそうと思ったことにどんどん挑戦していきたいです。
(2018年6月20日/都内某所にて収録)

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