TOPICS:

「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてサンガッツ本舗代表・いちみや忠義氏のプロフィールなどをメインに紹介! いちみや忠義Interview

「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてサンガッツ本舗代表・いちみや忠義氏のプロフィールなどをメインに紹介! いちみや忠義Intervier
大好評「エビ沢キヨミのそふび道」第3回「サンガッツ本舗編(File:7~File:9)」はいかがでしたか? 今回はソフビ製作の要であるワックス作業をサンガッツ本舗代表・いちみや忠義氏に見せていただきました。そんないちみや氏と言えば、個人メーカー&クリエイターとして2000年より活動開始して、キャリア17年となる個人メーカー&クリエイターの重鎮だ。ここでは、そんないちみや氏のソフビ活動を改めてインタビューから紹介。果たして氏は、どのように活動をスタートし、そして今、何を思うのか?
インタビュアー■エビ沢キヨミ、『そふび道』

1/取材を終えて

ーーお疲れさまでした。今回は貴重なワックス作業を見せていただきありがとうございました。
いちみや忠義(以降いみちや) ワックス作業で補足すると以前は混ぜる時、割り箸を使っていたんですよ。とにかくその頃は気泡に悩まされていたので、割り箸もいけないんじゃないかと。それでなんとなく、割り箸の中から空気が出てきてる気がして。そこで実験で使うようなガラス棒でやってみたら気泡が減ったので、これだと思いましたね。こんな風に自分の妄想から方法を導き出しているので、全然説得力ないです。
以前、牧野(良彦氏/TTToy)さんが「気泡を防ぐにはどうしらたいい?」って電話してきたことがあって。そんな調子だから「シリコン開ける時に祈るしかない!」って答えたら、呆れられました。
エビ沢 (笑)。ワックスって凄く地道な作業ですね。
いちみや 地道ですね。沢山パーツ作る時、ヒーターの大きさとか物理的な理由で、一度に作業できるのは2パーツであることが多いので、やりながら次の準備も進めていかないとならない。
ーー確かに何から何まで「段取りは命!」って感じですね。
いちみや ワックス作業をする日は、火を使ったり、ワックスの固まり具合を常に見てないとならないので作業場から離れられないんです。だから前の日にちゃんと食うものを買っておかなきゃなりません。
エビ沢 ここもまた段取りが!?

「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてサンガッツ本舗代表・いちみや忠義氏のプロフィールなどをメインに紹介! いちみや忠義Intervier
↑いちみや氏の説明をひとことも漏らすまいと食い入るように聞くエビ沢氏

2/プロフィールについて

ーーそれでは改めてサンガッツ本舗としてのプロフィールを聞かせてください。本格的に創作活動を開始された年とそのきっかけは?
いちみや 2000年8月の「WF」からです。きっかけは、その前の「WF」で好きなソフビを買おうと入場列に並んでいたんですが、トイレに行ってる隙に列が動いて、最後尾に並ばされ、こりゃあ次はディーラー参加するしかないなと。不純な動機です。
ーー本格的な活動以前より、やはり様々な創作はされていたと思うのですが、それはどのような創作だったんでしょうか?
いちみや 映像監督でもあるぐらいなんで、学生時代は自主制作映画なんかを作っていたんですよ。いろんなジャンルの。その中で怪獣とか怪物が出る映画を作るときは、造型も自分でしてたんですよ。ラテックス製のパペットとか。
ーーサンガッツ本舗というネーミングにされたのはなぜですか? 由来などがありましたら聞かせて下さい。
いちみや その自主映画のひとつに、某国営放送の番組内で作ったヒーローがありまして、そのヒーローの名前が「サンガッツ」なんです。太陽根性の英語という意味合いもありますが、その番組の放送日が3月だったから「サンガッツ」というのが真相です。
ーースタートはオリジナル怪獣でした。現在のデザインスタイルに落ち着いたのはいつ頃ですか? 辿り着くまでに苦労された話などあれば聞かせて下さい。
いちみや 現在のデザインスタイルなんてありますかね? 基本的に作りたいと思って、自分の出来る範囲内で作ってるだけなんで、全然落ち着いてないです。なので、苦労も無い代わりにフワフワしてます。
エビ沢 製作作業を全てひとりでするようになったのはいつからですか?
いちみや 最初に作ったソフビが「サンガッツ」というヒーローと「ウサリン」という友人のキャラクターだったんです。その時「サンガッツ」は原型だけ作ってワックスは工場へお願いしたんですが「ウサリン」は費用を安くするチャレンジとして、自分でワックスをやりました。だから最初の「サンガッツ」以外は、全てロウ型は自分で作ってます。その頃、ホビーの枠でオリジナルキャラクターのソフビを作っていたのはアマプロの喜井竜児さんだけだったかと思います。自分はその次くらいだから、もう17年ぐらいやってますね。
ーーちなみにこれまでの代表作って何になるんでしょうか?
いちみや 強いて挙げると「SUIKO」ですかね。「うらなめ」とか最近だと「漢鮫」もあるんでしょうけど。でも常に代表作は次回作ってことで。

3/趣味趣向について

ーー最初に子供の頃好きだった作品の思い出などありましたら聞かせて下さい。
いちみや 普通に『ウルトラシリーズ』や『仮面ライダー』など特撮番組は好きで見てましたね。ソフビを並べてご満悦な写真がありますから。
ーー現在ふりかえってみた時、そうした思い出の何かが「今の自分の作品に活かされているな……」と思うことがあったりしますか? それは作品のどんな所でしょうか?
いちみや 多分「思い出の何か」は無いと思うんですよ。子供のころ見てたモノの追体験や再現で創造するほどオトナじゃないんです。『ウルトラ』や『ライダー』は今もやってますから、思い出じゃなく、ずっとつながってるんです。その上で、今の自分が感じたまま作ってないような気がしますね。
ーー現在も様々な作品をご覧になっていると思います。今はどのような作品が好きですか?
いちみや 映画は年に100本以上は映画館で見てますね。今は家から5分のところにシネコンがありますし。好きなジャンルは特になくて、SF、ホラー、コメディ、青春ものとか洋画、邦画とわず何でも見ます。だいたいレイトショーで見るんですが、オッサン一人が少女漫画原作の映画を見てるってのは周囲からすると奇妙な光景でしょうねえ。
ーーそんな好きな作品などに触発されたりしますか? またそれによって制作された作品などがあれば教えて下さい。
いちみや ソフビデザインに映像作品の何かが触発されたことは、あんまり無いと思います。映画は物語を見てるので。美術館での展示とか、デザイン関係の本の方が触発されますかね。例えば「SUIKO」のポーズバリエーションなんかはアイドルとかの写真集からインスパイアされた所はあるかも知れません。

「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてサンガッツ本舗代表・いちみや忠義氏のプロフィールなどをメインに紹介! いちみや忠義Intervier
↑幼少期のいちみや氏。こうしてみると怪獣ソフビ作りへの道は必然だったように感じる

4/現在の活動について

ーーキャラクターを創造するときに気をつけていることやこだわりなどを聞かせて下さい。
いちみや こだわらないことですかね。いや、こだわって作っても受け手が感じる部分って、人それぞれ違いますから。基本的に自分のキャラクターに説明を付けるのは好きじゃないんです。自分で楽しんで、気持ちよく作れていれば、それが一番幸福なことです。それを見て買った人がどう思うか? その人が思った設定が正しいと思っているんで、設定がなくて売れなくても、それは別にいいやって感じです。
ーーそれを造型するとき、あるいはいちみやさんは依頼原型も受けたりされていますが、それらを造型するとき気をつけていることやこだわりなどを聞かせて下さい。
いちみや 原型依頼はそんなに無いですけどね。まあ、依頼の場合は、依頼された人というのがいるわけですから、その人の大切にしている部分を見つけて、そこを外さないように作ります。どうしてもソフビにする時に、デザインを変更せざるを得ない箇所は出てくるので、そこを納得してもらうことが重要ですね。
ーーイラストや立体に関しての彩色の時に気をつけていることやこだわりなどを聞かせて下さい。
いちみや 彩色については、例えば「SUIKO」のような単純なデザインのキャラクターで、いろいろ配色を試していますね。体色、髪の毛、甲羅といった限られた箇所をどのような配色にするか。自分の好きな配色より、思ってもみない配色の方が売れたりしますから、そういう結果を見るのは面白いですね。
エビ沢 そうえいばソフビの彩色でクリップは使わないんですか?
いちみや 10~10数個など少ない場合で、手を汚さないようにするには便利なんでしょうけど、50個ぐらい一気に作る場合、いちいち手の汚れを気にして使ってられませんよ。直置きで50個を置いた方がたくさん並べられますから。ソフビカラーで手が赤くなったままコンビニに行くと、店員がギョッとしてますね。
ーー今回の取材では、作業中にいろんなことに気づいたというお話がありましたが、このキャリアでも学習することや気づくことってまだまだある感じですか?
いちみや そりゃ、ありますよ。この方が簡単に出来るとか、効率が良くなるとかの発見とかね。ただワックス作業に関してはそうもいかないですね。話は戻りますが「型取り」は「めんどくさい」けど残念ながら仕方ないです。
エビ沢 「めんどくさい」ことがキライなんですね。
いちみや そうです。何をもって「めんどうくさい」というのもありますが、自分じゃなくて他人でも出来るような内容の作業は、やはり「めんどうくさい」です。そういう作業内容が、ソフビ作りにはちょいちょい含まれるんです。もちろん、そこを「誰かにやってもらう」という手段もあるんでしょうけどね。それをしてしまうと「自分で作った」感が削がれるような気もして。勤勉とかそういう意味では日本人って基本的に「ドM」だと思うので、自分もそういう所があるかもしれませんが、誰かからやらされるのは絶対にイヤなんです。自分をいじめることが出来るご主人様は自分だけです。セルフSMです。
ーーなんか名言が出ましたね!
エビ沢 それは健全で健康的な考え方だと思います。

5/これからの活動について

ーー先ほども言われてましたが、ソフビを作り続けて17年経ちました。
いちみや 金型リストを見ると200枚くらいありました。当社調べですが多分、個人製作では最高だと思います。
ーー17年たって変わりました? 気構えであるとか、技術点は当然上がってるんでしょうけど
いちみや ほんと今年が一番大きく変わったところですね。このアジアバブル(現在、アジア需要の急速な高まりにより、国内イベントではアジア系海外バイヤーが大量に押し寄せ、国内クリエイターはアジア圏の各イベント出店やギャラリーで繁盛に個展を開催中だ)が通り過ぎないと分からないです。この後、どうなるかの過渡期じゃないですかね。ウチとしても作ったソフビの個数としては過去最大だと思います。
ーー確かに過渡期なのは、もの凄く感じます。逆に作る側もキャリアを重ねて、次に何を作りたいのか分からくなっている方もいるように感じています。ただサンガッツ本舗さんは、本当に作りたいモノのアイデアが枯渇しないですよね。
いちみや ソフビという懐かしさを感じる素材だけど、過去の何かにとらわれて作っているわけじゃないので、作りたいものに終わりはないですね。それが売れるかどうかは知らないですけど。いま何を作ればいいのか分からなくなる人がいるのも理解できます。ひとつ作るのにしても、お金はかかるので「何を作るか?」凄く考えるのは仕方ないことだと思います。でも自分の場合は、もう200枚金型を作っていますから、そういうことは麻痺してるんですよ。初期費用の回収とか考えてなくて、思いついたら、とりあえず作るって感じです。
ーー素直に作りたいので作ってしまっている印象ですよね。
いちみや そうですね。人間やめますか? ソフビ作りやめますか? ってなもんで、真っ当な人は真似してはいけないことだと思います。
ーーそれを実現出来るのは、全部自分でやるからこそみたいな部分も大きかったりしますか?
いちみや どうですかね。最初から自分でやっているからよく分からないですけど。ただ普通の人生を送っている人って、美味いもの食べたり仲間とワイワイしたり余暇を楽しむためにお金を使うんですが、自分はそういうことよりもソフビを作るのに金をかける方が好きなんでしょうね。カッコよく言えばストイックとも言えるけど変態ですね。実際、作って売って支払っての自転車操業ですから。
あと思うことは、いまウチの「うらなめ」や「漢鮫」を見て、かわいい系ソフビが売れているから作ろうというのは、ソフビの個人メーカーやクリエイターの考え方としては違うんじゃないかと思っています。自分はかわいいモノを作ってるつもりはなくて、単に作りたいモノを作ってるだけですから。「うらなめ」だって2009年に作ったものですし「漢鮫」も最初はほとんど売れませんでしたし。そもそもソフビの個人メーカーやクリエイターって、大手メーカーなどの売れ筋に満足いかないから自分で作り始めるわけですよね。そうしたソフビが、まず大多数に売れないのは、当たり前だと思うんです。だから自分たちみたいな存在は、まず最初に「売れないモノを作ってる」という自信を持った方がいいと思うんですよ。
ーーなんかそれも名言っぽい!
いちみや ただそうなるには、売れなくても売れなくても売れなくても、もうひとつ売れなくても作り続けなくてはならないでしょうけどね。もちろん、作ることに満足するか、売れることに満足するか、人それぞれですけど。
ーーでも作ってきたソフビに満足はしてるでしょ?
いちみや 満足してないんじゃないですか。だから続けられたんじゃないかなと思います。やはり、代表作は次回作ってことです。
ーー今なお満足するモノを作りたくて、真っ直ぐ突き進んでいる感じ? いちみやさんのとにかく作って売ってゆく行動力というか馬力は凄いと思うんです。仲間とつるむというより基本は常にひとりで行動している。今年5月は世界各国のイベントをひとりでツアーしましたよね。その馬力の源は何だろうと思うんです。
いちみや 基本的に天邪鬼なので、みんなが行きたい方向の逆を行くというのが好きなんだと思うんです。どんなことにも王道ってありますよね。でも私はそのことに対して逆をするみたいな。
ーーなるほど! そんなサンガッツ本舗さんですが今後の課題などはありますか?
いちみや 来年は、今年5月のクレイジースケジュールに輪をかけて、一年全体がクレイジースケジュールにしてやろうかと計画中です。その中で、新作も作っていかなくてはなりませんし、新たなラインというか、これまでに自分が作ったことがないようなソフビも作りたいですからね。出来れば展示して映えるような大きなサイズのソフビも作りたいんですけど、どうなることやら。
ーー本日はお忙しい中ありがとうございました!
いちみや もし、これを読んでイベントや展示に誘ってみようかなと思った方がいたら、遠慮なく連絡してきて下さい。日程がかぶってなければ喜んで出品します。来年の土日は全てイベントで埋めたる!!!
(2017年10月5日/サンガッツファクトリーにて収録)

「エビ沢キヨミのそふび道」を終えて改めてサンガッツ本舗代表・いちみや忠義氏のプロフィールなどをメインに紹介! いちみや忠義Intervier
↑作業効率を追求したいちみや氏の仕事机! 来年製作予定という大きなサイズの新作に期待したい!!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

人気記事

SOFVI INSTAGRAM

※instagramにハッシュタグ "#sofvitokyo" をつけて投稿した画像が表示されます。

    もしもし こちら編集部

    東映レトロソフビ
    コレクション10周年

    ページ上部へ戻る