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「エビ沢キヨミのそふび道」取材を終えて。照紗氏のプロフィールなどをメインに紹介! 照紗 Interview

「エビ沢キヨミのそふび道」取材を終えて。照紗氏のプロフィールなどをメインに紹介! 照紗 Intervier

大好評「エビ沢キヨミのそふび道」第2回「照紗氏編(File:4~File:6)」はどうでしたか? ここでは改めて人柄や作家性への追及インタビューから照紗氏を紹介。どのように作家活動をスタートさせ、印象的な「和」の作家性はどうして育まれたのか? そして最後には今後の野望など! 実に興味深いお話が聞けました。多分これを読む前と後では、多少なりとも照紗氏の作品に対する印象が変わるかも?
インタビュアー■エビ沢キヨミ、『そふび道』

1/プロフィールについて

ーー本格的に活動開始された年と、そのきっかけとなった出来事などがあれば聞かせて下さい。
照紗 実際に作家活動を始めたのは2003年ぐらいからです。当時グラフィクデザイナーの会社に勤務してて仕事は楽しかったんですが「これって私がやりたかったことかな? ずっとこれをやってくのかな?」と思い始めていたんですね。当時は会社が早めに終わった時は、通勤途中の原宿でよく買い物をしていたんですが、当時フォレット原宿というビルがあって、4階がポップアート系の若手のギャラリーだったんです。そこである時「20代限定、女性アーティスト募集」をしていた。これは「会社以外の場所を作るチャンス!」と思って面接を受けたんですね。その時のメンバーは、今でも活躍されるFEWMANYさんやPOP BOXで人気だったりする作家さんたちでした。結局その企画は諸事情でなくなるんですが、そこに最後まで在籍しました。ここで初めてオリジナルの作品を出品したのがスタートです。その後、初個展をやった2005年に当時勤めていた会社も辞めましたね。
ーーということは、その後はずっと作家活動1本ですか?
照紗 いえ、このままだとひとつの会社しか知らないことになるので転職したかっただけです。クリエイティブ系の派遣会社に登録して、2年間くらい派遣クリエイターをやってから今も続いているデザイン専門学校で夜間社会人コースの講師になるんです。そこではイラストの描き方やグラフィックデザイナーの経験を生かしたPhotoshopやIllustratorなどの使い方を教える1年コースを担当しています。もう10年くらいやっていますね。
ーーやはり以前からクリエイティブな活動はされていたんですか?
照紗 絵を描くこともずっと好きでしたから、いずれクリエイティブ関係の仕事に就くであろうと思っていたんです。あと同時に海外できちんと英語を勉強したかったので、ずっと両親にお願いして高校と大学はオーストラリアへ留学しているんです。
エビ沢  自らの意思で海外の学校へ……それはなぜ?
照紗 両親が仕事で海外へ行くとこが多くて私が5歳の時、1年ほどベルギーで暮らしたんです。その時、通った保育園で言葉が不自由すぎるストレスから人に噛み付くっていう適応障害が出ちゃったんです。だから私にとってコミュニケーションて凄く大事で、母には「自分の言葉でコミュニケーションして友達を作りたい!」って言っていたらしいんですね。それで帰国後、英語が1番メジャーな言語なので、すぐ英会話教室に入れてもらっているんです。この時からこの「言語力」と「コミュニケーション力」のふたつはこれからの自分にとって大きな2本柱になると思っていました。留学していた時、お友達が日本のことを聞いてくるのに、私は日本のことをあまりにも知らないことに気づかされるんです。そこで帰国後とにかく何でもいいので日本の伝統文化を勉強したいと思ったんです。するとタイミングよく私の父の友人がある歌舞伎役者さんの後援会をしているということから歌舞伎と出会うんです。歌舞伎役者さんって現在で生活しているけど、芝居に入ると江戸へタイムスリップしている。そこが凄くおもしろいと思いましたね。それで見始めてもう10年以上にはなりますね。
エビ沢  歌舞伎を観始めたのは大学卒業されて帰国してからですか?
照紗 そうです。21歳ぐらいで帰ってきてるんですけど22〜23歳ぐらいから観始めたのかな……。
エビ沢  その頃、お仕事の方はどうだったんですか?
照紗 先程言ったグラフィックデザイナーとして就職していました。
エビ沢  着物を着られるようになったのはいつくらいからだったんですか?
照紗 もともと好きでしたが、本格的に着るようになったのはやっぱり歌舞伎を観るようになってからですね。絵に描こうとも考えてて何事も実践したいタイプなので着てみたんですね。私は成人してから帰国したので国内に何のベースもないから、そこで自分を知ってもらうには、衣装やメイクなど分かりやすいアイコンがあったほうがいいと考えたことも理由でした。作家活動し始めた時、迷走した時期があって何が自分にとって1番なのか? いろんなことを試す中で、反応が良かったのが着物姿だったり「和テイスト」の絵だったりしたんです。だから私の着物はコスプレみたいなもモノです。かけ出し時期のパーティーやレセプションには、全て和服で行くようにしたら、おかげですぐ「着物の人」って認識してもらえました。ちなみにイベントで着るメインの着物は自分でデザインしています。
ーー照紗さんというと着物など「和」のイメージが強いですが、それは初めにそういうコンセプトありきだったんですね。しかしその発想は作家ではなくて完全に企画屋ですよね(笑)。作家は内側から吐き出して表現しますが、照紗さんはサンプルを出した結果「和」に流れ着いたということですよね。ただおもしろいのは「和」への興味は海外留学の体験からブレてないんですよね。だから今まで続いてるとも言えますね。
照紗 いつも人の反応を見ていますね。周りには「これがないと生きていけない!」という根っからの作家さんもいますが、私はそうなれないです。私の根底には「共感してほしい!」が凄くありますから。幼少期にコミュニケーションがとれなくてストレスを感じていた。そのため私の場合、自分だけ語るのでは成立しなくて、逆にそれがストレスになってしまうんです。ある程度大衆的というか、マニアックにフォーカスしても、誰にでも分かる言葉で共感してもらいたいと思っています。ただそれはみんなが好きなモノを一緒に好きになるっていうことではなく、自分なりに独自のコンテンツを紹介する。作品世界の執着があるとしたら、私が執着するのはコンテンツそのものではなくて、その後のコミュニケーションなんですね。そこが1番怖いけれど、通じた時が1番うれしいんです。
ーー照紗さんのソフビは郷土玩具がモチーフですが、きっかけはなんだったんですか?
照紗 宇都宮の「キブナ」です。夫が「好きそうなのを買ってきた」ってお土産が「キブナ」のぬいぐるみで、それを見た時「何これ可愛い」って! 幼い頃に見た郷土玩具は怖かったんですが赤、黒、金が凄く好きなこともあって、やはりこういうプリミティブなカラーは「人の心を惹きつける」って凄く響いたんです。「赤べこ」もそうだけど、赤を基調にした郷土玩具は「赤もの」って言って魔除けや病除けとされているんですよね。そういう独特の魅力に改めて気づかされたりして「キブナ」が郷土玩具に改めて立ち返るきっかけになったんです。そこには人の願いがあったりするのでシンパシーを感じますね。それに郷土玩具って元祖キャラクターデザインだと思うんです。江戸時代から今でも買われてるって、こんなに長く続いてるコンテンツは、なかなかないですよね。そこから学ぶものもすごく多い。みんな凄く買っているわけではないですが、どんな地域の家にもひとつやふたつあって、日本人だったらなんとなく知ってるという所も凄くおもしろいと思いますね。

「エビ沢キヨミのそふび道」取材を終えて。照紗氏のプロフィールなどをメインに紹介! 照沙 Intervier
↑照紗氏の手にある旦那様がお土産に購入したという「キブナ」のぬいぐるみ!

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↑宇都宮では、釣り竿で釣ってるような形で売られているのだ

2/ソフビ活動について

ーーそんな照紗さんが、どのような経緯でソフビを製作するようなったのですか?
照紗 作家活動する中でおもちゃ好きの作家仲間の紹介で、サンガッツ本舗さんたちと知り合うことになるんです。ソフビへのカスタムの最初は、確か2007~2008年ぐらいで、ソフビメーカーのMONSTOCK!!さんが開催したイベントを観に行ったら「キューピーのカスタムしてみませんか?」という話をいただいて、そこで初めて彩色しました。最初は何で着彩していいか分からなくて、その時はクリアのトップコートを吹いてからアクリルなどで塗ったと思います。ほかはMAXTOYさんのアニバーサリーイベントで絵を出品したぐらいでした。ちょうど「キブナ」で頭が一杯になっていた時期に、そのMAXTOYさんが女性アーティストで怪獣デザインコンペ企画「怪獣ギャルズ」を開催しようとしてて相談を受けたんです。そこで私の方からキャラクターデザインが出来る女性作家さんを集めて「女性作家による怪獣デザイン」を依頼した。ここで私が「もうほかのキャラクターは考えられない!」って提案したのが「キブナドン」です。単に「キブナ」を描きたかっただけですが、コンペでは「郷土玩具はその地に根付いたおもちゃで、ふるさとがピンチになった時に怪獣になって助けてくれる守護神的な存在!」とかこじつけて……でもこうした設定って、昭和の怪獣の世界観と重なる所もあって、自分なりに感じていた怪獣観とかヒーロー観を上手くアウトプットできたと思っています(笑)。
ーーそれがコンペで優勝してソフビ化されましたのがソフビデビューになりましたよね。
エビ沢  ソフビはその時の出したデザインのままなんですか?
照紗 「キブナドン」では1ポーズしか描いてないんですが、それを見た原型担当の牧野(良彦/TTToy)さんがデフォルメをしてブラッシュアップしてくれたおかげで、かなりカッコよくなっていると思います。
ーーやはりいずれ立体をやりたいと思っていたんですか?
照紗 いいえ。当初は平面にしか興味がなく「キブナドン」以前、ソフビのクリエイターさんたちとのお付き合いは長かったけど、全く自分で作ろうとは思いませんでした。実は幼少期のトラウマが……。当時はぬいぐるみが大好きでいつも持ち歩いていたんですが、ある日、食事中に味噌汁で汚してしまって、泣きながら石鹸で洗ったんですね。好きなぬいぐるみが汚れて朽ちていくということに気付いた「味噌汁事件」が結構ショックだったため、その後は立体モノから気持ちが引いてしまったんです。それに作家活動をスタートさせた時期って、ちょうどキャラクターが盛り上がってて、これはデザインと世界観がしっかりないと無理だし、私もいくつかキャラクターデザインのアイデアを出したことはありましたが、あるところ以上は評価が得れず、その才能はないと諦めていましたから。
ーーそんな味噌汁事件のトラウマから距離が出来たにも関わらず、なんで立体に戻ってこれたんですか?
照紗 もともとぬいぐるみなど立体は好きなわけで、ソフビはもう単純に「汚れない」と思ったからです(笑)。今、ソフビを昔のぬいぐるみのように、連れ歩いて写真撮ったりして同じことをしています。やっと気楽に連れ歩ける友達ができたと思いましたね(笑)。
ーーそこですか!? ソフビなら汚れても拭きやすいですからね!(笑)。
エビ沢  確かに「イヌハリゴン」はSNSなど食べ物とよく一緒に写ってることが多いですよね。でももう食べ物ついても拭けますからね(笑)。
照紗 「キブナドン」の時、私の周囲では「今まで絵描きだったのに!」って凄くビックリした人が多かったんです。でもデザインを見たら私の今までの作品表現と通じる部分が見える、とみんな納得していましたね。キャラクターデザインはずっと好きだったけど、自分にその才能がないと思っていただけで全く描いてないわけではなかったので私的には、戻って気た感じでもあります。
ーー結果的には「怪獣ギャルズ」の企画が照紗さんを後押ししたってことですか?
照紗 それが大きいですね。
ーー現時点でのソフビ代表作を教えて下さい。
照紗 「キブナドン」はMAXTOYさん主導で作っていただいた作品だったんですが、発売してわずか1年でバリエーションを数多く販売していただいたおかげで、国内外のソフビクリエイターさんやトイメーカーさんと交流することが多くなりました。それもあって「1種類だけで終わらせるのはもったいない!」と感じて、「郷土玩具怪獣シリーズ」ということでセルフプロデュースしたのが「イヌハリゴン」なんです。製作にあたっては、海外メーカーさんからありがたいお誘いもあったのですが、やっぱり郷土玩具がモチーフだったり、こうした怪獣ソフビの発祥は日本なので、そこはメイドインジャパンにこだわりたいと思いました。
ーー実際に製作されてから見たソフビ界はいかがでしたか?
照紗 ソフビクリエイターさんって、それぞれが独特の美学をお持ちの印象が強くて……だからこそ、そこに楽しんで寄り添うことも大事な気がしました。それが私にとって正しいソフビとの接し方かな? と感じましたね。ソフビは作り手もファンも美学を持ってる人が多いですから……なかなか業が深いとも思いました(笑)。
ーー現在の代表作はやはり「イヌハリゴン」ですよね?
照紗 「キブナドン」もバリエーションを含めて相当発売しましたが、昨年デビューの「イヌハリゴン」はここ最近のアジア圏でのソフビブームのおかげもあって、すっかり波に乗らせていただいてバリエーション数も圧倒的に多いですから。
エビ沢 ちなみに「キブナドン」や「イヌハリゴン」のデザインが出来るまでどのくらいの時間がかかりましたか?
照紗 「キブナドン」はコンペだったしデザイン云々より「キブナ」の事ばかり考えて、もとのかわいらしさを際立たせたいと思っていたから深く考えず、あまりデフォルメはかけてないんです。あとは強そうにしようぐらいでしたね(笑)。「イヌハリゴン」は犬張子の怪獣にしようとアイデアが出た時、すぐ出来た気がします。ただ表情とか顔の形とかプロポーションも納得いかなくてブラッシュアップするのに数週間ぐらいかな……こういう場合、1番最初に出たアイデアがそのままなる事がほとんどなんですが、それでも迷走して何パターンも描いてみて、やっぱり納得しないから最初に戻って、もう1回、良い形に調整……っていう感じでしたね。
ーー「イヌハリゴン」の造形はどなたが担当されているんですか?
照紗 原型はP.P.PUDDINGさんです。牧野さんとは、また造形ラインが違って「シュッ!」っとしたラインに愛らしさ、かわいさ、遊び心が満載で印象的でした。お願いする時は3面図を描いたのとオリジナル犬張子の写真も送りましたね。これは子犬なので、丸みというか「出来ればお腹など“ぽちゃっ”とした感じを出してほしい」とお願いしました。
ーーこのイヌハリゴンは2本足で立ていますがどうしてですか?
照紗 「キブナドン」が2足歩行ではなかったから、今度は普通に立たせたいと思ったからです。また「キブナドン」は5パーツで、顔や手が動いて凄く表情がついたので「イヌハリゴン」も同じく5パーツで作ろうと思っていました。

「エビ沢キヨミのそふび道」取材を終えて。照紗氏のプロフィールなどをメインに紹介! 照沙 Intervier
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↑「キブナドン」と「イヌハリゴン」のバリエーションたち!

3/趣味趣向などについて

ーー次に影響を受けた作品についてお話を伺いいます。子供の頃ってどんな作品が好きでしたか?
照紗 影響というか子供時代、戦隊モノはずっと放送されていたので見ていましたね。私の場合、女の子が興味を持ちそうな魔法少女などのキラキラした感じに傾倒しなくて、どちらかというと戦う女性など戦隊モノの特撮ヒーローに憧れていました。そこでも、いわゆる「女の子」なピンクではなく、ちょっとクールだったり勝ち気だったりして、ヒロインを支えるブルーやイエローのようなキャラクターが好きでしたね。幼少の頃、こけしのような風貌だったのですが、渋めの顔の子供って疎外感を感じるというか……私は幼稚園から小学校くらいまでざんばら髪のだったこの時を「こけし時代」と呼んでるんですけど、同じ髪型でも妹の方が目が大きかったりして、こけし顔じゃなかったのでさらに差を意識してしまって……。だから女性の容姿には、もの凄く執着があります。魔法少女ってかわいらしい少女が憧れる世界だと勝手に思い込んで性にあわなかたったし、この時期の女の子とは話が合わないからこそ、それを払拭するためにもっと自由に感じた男の子コンテンツに興味を持ったのかなと思います。
エビ沢  その気持ちはなんか分かる気がしますね。だって私のほうが断然こけし度高いですから(笑)。確かに照紗さんのキャラクターは、かわいいけど、かっこいい感じがありますね! キラキラしたモノより「クールの方が好き」という照紗さんの絵は、クールな中に明るさを感じるんです。今日初めてお会いしましたが最初、着物だから結構、厳しめの印象であまり話さない方かな? と思ってドキドキしていましたが、全然違ってすげーいい人だと思いました!(笑)。
照紗 もともと着物も憧れなだけですから、厳しいとかはないです。そういう意味では例えば日本のモノを海外作家さんが作るのと意識が近いと思います。また性格の明るさは、16歳〜21歳まで留学したオーストラリアの環境のせいだと思います。その時かなりの人格が作られていますから。だから例えばイギリスだったらもっと違った性格だったかもしれないですね(笑)。だから幼少期は「容姿の作りはどうしようもないから、それより魅力的なスキルがついたら良いのかな?」って思いました。自分自身をプロデュースですよね。認められたかったんじゃないかなーって思うんです。
ーーそういう思いが照紗さんのプロデューサー視点を育んだと言えなくないですね。
エビ沢  みんな認められたい欲はあるけど、幼少期でそこまでのセルフプロデュースはなかなか出来ないと思うんです。
照紗 それは早い時期に流行ってる髪型とか洋服をトライして、かなり失敗してしまったからかもしれないですね。
ーーそこでヘコむことなく、何かあるはずだって思えたプラス思考は凄いですね。
照紗 母がフェアだったんです。「皆一緒のかわいいじゃない。あなたには、あなたのかわいさがあるんじゃない?」って期待してくれたので「お母さんが褒めてくれてるのは何かあるからだ!」と思えましたから。こうした経験が今のプロデューサー視点の元になっているのかもしれないですね。ただ今になれば「なんて屈折してたんだろう」と思いますけど(苦笑)。子供なんてどんな風貌であれ、みなかわいいし、そこまで卑屈にならなくてもいいんですよね。今になって当時、寛容に色んな物事を吸収すればよかったなと思います。だからこそ自分が好きなモノを認めてほしくて、ずっと作り続けているっていうのはあると思いますけど。
ーーそう思うと幼少期からの価値基準は現在までブレてないですね。
エビ沢  そしてテーマも「歌舞伎」や「着物」、この「郷土玩具」など「和」で一環していますね!
照紗 ずっと「和」についてお話していますが、実は着物のデザインでもガッツリ「和」より、どこか崩して現代的なモチーフやカラーが入っている方が個人的に好きなんです。崩してもトータルでステキだったら説得力が出ると思ます。冠をかぶせてしまうと固定概念にやられてしまうので、郷土玩具も伝統的なばかりだけじゃなくて、どこか現代的なポップさもあっていいと思っています。根底がブレなければ、大概のことはやっていいかなと思っていますね。
ーーだから照紗さんの作るモノは、押し付けがましくなくて接しやすいんですね!

4/現在の創作活動について

ーー作家活動としてワンオフなども多数手がけられていますが、彩色で気をつけていることやこだわりなどを聞かせて下さい。
照紗 「イヌハリゴン」の製作初期、肉球とツメは全部、筆塗りでずっと塗っていました。でも全部、工場に任せての出荷だと目の前をすり抜けてしまうような感じになりますから。少しでも自分で塗っていると「フィニッシュに自分が関わってる!」という気持ちになれるんです。先輩のソフビ作家さんは、自分で彩色する方が多いし、私もそういった側面に敬意を持っているので、やっておきたいとエアブラシも勉強しました。ただ私の場合、絵も描いたり、企画を立てたりするので、それだけしているわけにもいかない。いろいろ自分で経験してみた結果、ソフビクリエイターの在り方はそれぞれだなとも思いました。私は企画側のスタンスで、キャラクターの世界観を深めたり、アウトプットしてゆくことも、私らしい仕事の形だと考えるようになりました。
エビ沢  これ全部画材ですか?
照紗 そうですね。私はもともと絵描きだからソフビ専用カラーより絵の具の方が馴染みがあるんです。例えばここには下地材の黒いジェッソを塗ってるんですが、これをソフビに塗ると、アクリル絵の具の食いつきが良くなるんですね。あとこれはアブソーメントプライマーっていう下地剤なんですが、にじみやぼかしを作ることが出来るんです。本来キャンバスに塗るモノで、キャンバスは布だから滲まないんだけど、これを塗ると水彩画のよう描けるのでソフビに応用してみたんです。水を含ませて墨を乗せると水墨画みたいな滲みやぼかしなどのグラデーションが出せるようになります。逆にドライブラシみたいに水を付けずガサガサ塗ると、それだけで手塗り感が出せるんですよ。これは本来のソフビのやり方ではないんですけどね。もちろん従来の様にVカラー(ソフビ用塗料)を使ってのカスタムもします。
エビ沢  お仕事場には、もの凄い数の素体がありますが、これ全部ひとりで手塗されるんですか?
照紗 数は多めにオーダーしていますが、ここにある未塗装分はそうです。1回に20〜30体とか出さないといけない時は、下地のジェッソ塗りなどは、仲間に手伝ってもらったりしますがメインの彩色はひとりですね。
エビ沢  1日でどれくらい塗るんですか?
照紗 彩色デザインには時間がかかりますが、塗り始めたら2日で10体ぐらいですね。モノによっては流れ作業みたいに出来るので、実は製作自体はそんなに大変ではなかったりします。「イヌハリゴン」はスタンダードカラーに加えて、バリエーションはもう20種類を超えました。
ーーバリエーションやカスタムなどはどのようにしてカラーを決めているんですか?
照紗 決め方は今までやってきたデザイン仕事と同じで、クライアントさんに「何色が欲しい?」ってヒアリングしたり、イベントのコンセプトカラーなどから考案しています。「おまかせするよ」って言われた場合は依頼主の仕事内容など探って、好みそうなカラーを探しますね。本当、デザインの仕事と一緒ですね。

「エビ沢キヨミのそふび道」取材を終えて。照紗氏のプロフィールなどをメインに紹介! 照沙 Intervier
↑インタビューに出てきた下地剤のアブソーメントプライマーやジェッソ

5/今後の活動について

ーーそれでは最後に今後の活動の方向性や希望などありましたら聞かせて下さい。
照紗 やりたいことでいうと自治体とコラボしたいですね。作品製作を通じてつながりを作ったり、様々な人とコミュニケーションをとっていきたいというのが根底にあります。例えば「イヌハリゴン」がいれば、東京の下町の職人のおじいちゃんと話が出来る。ということはほかの地域の郷土玩具をモチーフに製作すれば、また広がることが出来る。だから「郷土玩具怪獣シリーズ」をご当地の方後任にしていけたらうれしい。ソフビは、メイドインジャパンにこだわって日本で作ってるモノだから共感してもらえると思うんです。日本地図上に1個1個シール貼っていくみたいに全種類出来たら凄い楽しいですよね。
ーー夢は「郷土玩具怪獣シリーズ」全国制覇とい壮大なプランですね!
エビ沢  ゆくゆくは照紗さんの郷土玩具怪獣ソフビで日本地図が埋まったらよいですねー!
照紗 そういえばこの間、実際に「キブナ」を作っている職人さんのお店にうかがう機会があってファンとして「キブナ」愛を告白して「キブナドン」を押し付けてきたんですよ。そんな「キブナ」愛活動(?)が実を結んで来月、宇都宮で開催される「キブナ」アートイベントへ出ることになったんです! 海外進出よりある意味では、一番出したかった場所が宇都宮というマニアックな展開で、ここ最近の個人的ビッグニュースなんです。そのイベントプロデューサーさんは、偶然「キブナ」のソフビを作ろうと思っていたらしいんですが、調べたら「すでに『キブナ』をソフビ化しているマニアックな人がいた!」って問い合わせをいただいたんです。もう私の向かってる方向が意味わかんないですけどね!(笑)。
ーーでも「郷土玩具怪獣シリーズ」全国制覇の第1歩達成ですよね! 今後の侵攻計画に期待します!!
(2017年9月14日/照紗氏のお仕事場にて収録)

「エビ沢キヨミのそふび道」取材を終えて。照紗氏のプロフィールなどをメインに紹介! 照沙 Intervier
↑例えば昭和の女優さんで一番好きなのは、愛くるしい顔と声。独特な魔性感と品の良さで若尾文子さんが凄く好きです。あと仇っぽいあたりは梶芽衣子のイメージが強いですね。マンガ家・上村一夫さんの絵が好きなのでその辺りはリンクしますね。『ウルトラセブン』のアンヌ隊員・ひし美ゆり子さんも紅一点で活躍する姿として好きでしたよ! 華やかで美しいのに凛々しくて強い女性象は、こういった時代や歌舞伎などの影響、戦隊モノのブルーやイエローあたりの活発で凛々しいヒロインが好きというのは繋がっていますね。そんなこんなで強くなりたくて居合いもやってました(笑)。そう語ってくれた照紗氏に「和」の心やプロデュ−ス力、彩色テクニックついて学んだエビ沢氏。そしていよいよ「エビ沢キヨミのそふび道」はより深いソフビ界へ! 次回第3弾は、個人メーカー&クリエイターの重鎮、サンガッツ本舗・いちみや忠義氏が登場!

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