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祝10周年記念特集!! 『仮面ライダー1号編、2号編」の「ショッカー怪人」はもう少しでコンプリートします! 原型・熊之森恵氏Interview


↑熊之森氏の作業場より。作業中、何度かワックスに引火して危険なこともあったという……

■Profile
ソフビコレクター兼玩具製造関係者

熊之森恵氏は『仮面ライダー』の「1号編、2号編、ショッカー怪人」コンプリートへの熱い想いからシリーズ原型を担当。そうはいいながら『仮面ライダー』全98話をコンプリートするには、相当な時間と体力が必要なのは想像に難くない。途中で諦め、へこたれることなくこの10年を突っ走ってきた熊之森氏は、どのようなモチベーションを持ってシリーズへ挑んだのだろうか? 改めて本シリーズに関わったきっかけから、キャラクターチョイス、造形コンセプトなど「東映レトロソフビコレクション」10年の歴史について思う存分語っていただいた。すでにコンプリートが見えている「1号編、2号編、ショッカー怪人」はもちろん、シリーズの今後についても聞いているので、ぜひ最後までお付き合いください!

INTERVIEW

ーー「東映レトロソフビコレクション」が10年を迎えました。造形担当の立場から感想を聞かせてください。

もともと『仮面ライダー1号編、2号編』の「ショッカー怪人」をざっと数えただけでも「全てをこなすには10年はないと無理」って最初から思っていました。だから10年というのは想定通りで……スタートしたらこれぐらいかかると覚悟していましたから。

ーー覚悟ですか……。改めてそんなシリーズで原型を担当されることになった経緯を聞かせて下さい。

個人的に怪獣や『仮面ライダー』など1960~1970年代の当時モノソフビをコレクションしているんです。東宝さんや円谷プロさんと比べて東映さんのヒーローや怪人たちは、その多くがソフビ化されてないです。簡単にいうと「その補完がしたい!」ということだったんです。それで当時、私からメディコム・トイさんへ企画を持ち込んだら、赤司さん(竜彦氏/メディコム・トイ代表取締役社長)も同じような企画を考えられてて、上手くタイミングがあったということだったんです。

ーー引きあったんですね。第1弾は『仮面ライダー』の「ドクガンダー(成虫)」と『人造人間キカイダー』の「グレイサイキング」でしたね。

それは単純で、最初は「ライダー」などのヒーローからではなく怪人から出したかったからです。とにかく敵怪人のコンプリートを目指していましたから。

ーー『人造人間キカイダー』は確か赤司さんが選ばれたと思います。シリーズは最初「キカイダー」から1体、「仮面ライダー」から1体だったわけですが……。

『人造人間キカイダー』のコンプリートは、赤司さんの念願だったみたいですね。

ーー『仮面ライダー』の「ドクガンダー(成虫)」は熊之森さん発信ですか?

どうだったかな……そんな気もします……。確か作品放映当時の1970年代にミニソフビが発売されていたけど、スタンダード(全高約23cm)サイズが未発売だったから選んだ可能性はありますね……。

ーースタンダードの「ショッカー怪人」選びは、そういう基準だったんですか?

確かそうだったと思います。スタンダードで当時未発売を基準に選んでいました。

ーー東映さんのヒーロー&怪人キャラクターは膨大です。毎回のリリースについてどんな意見が交わされていたのでしょうか?

特に意識しているわけではなく毎回、赤司さんと話しながら「次はこれで行きましょう!」という年間計画を立てる感じでしたね。

ーー年間計画は月2体として全24体ですか?

いやシリーズ初期……中期ぐらいかな? それぐらいの時はもっと多かったです。「途中でペースを上げないと、コンプリートは10年では無理!」ということがわかってきたので1回、発売ペースを上げているんです。

ーー『仮面ライダー』の「ショッカー怪人」を10年で終わらせる目標だったからですか?

いえ先ほどから言っていた「10年」は「それで終わらせる」という意味ではなく、かかるという覚悟です。それにシリーズでは途中から「いろんな東映ヒーローもやりましょう」ということになりましたから。おかげで仕事量が結構なボリュームになっていきましたね。

ーー確かにもの凄いボリュームでした。

赤司さんと話をすると、わりと製作が増える方向にいってしまう(苦笑)。だから一時期はちょっと大変でしたね。でもせっかく作れるチャンスなので、ここを逃すわけにはいかないですから。

ーーコンプリートという野望があるなら尚更ですね!

がんばりました!

ーーシリーズはスタンダードをメインにミドル(全高約15cm)もスタートし、キングサイズ(全高約30cm)、ジャンボサイズ(全高約60cm)、スタンダードの付属でミニサイズ(全高約7cm)とサイズのバリエーションが増えましたよね。それぞれをスタートさせた経緯を教えて下さい。

経緯ですか……。 

ーー1970年代当時の各メーカーが発売したソフビがサイズ違いを展開していたので、アイデアとしては持っていたと思うんです。ただサイズ違いが増えると単に手間が増えて製作はさらに大変になりますよね。

そういう大変さより……「やりたい!」という気持ちの方が強かったですね。もう止められなかったという方が正しい(笑)。

ーー勢いがついた結果、そうなってしまったということですか?

そうでしたね。

ーー完全なワーカーホリックですね。リリースのボリュームはスタンダードの次にミドルが多いですが、リリース順がエピソード順です。それはどのように決まったんですか?

ミドルのリリース順は、正直にいうと考えるのが大変だったので「話数順で……」という流れでした(笑)。

ーーミドルはイベント以外では常に3体でラインナップされています。基本的に『仮面ライダー』からですが、時々、別作品が混じっている場合もありますよね。

ヒーローの場合は「他のヒーローもありかな?」という感じでしたね。ほか「ショッカー怪人」の中に『超人バロム・1』の「ドルゲ魔人」が混ざる場合などは個人的な思い入れからです。

ーー個人的なこだわりなどがラインナップに反映されているんですね。

あとミドルの良さって、サイズが小さいのでテーブルにズラッと並べられるおもしろさがありますよね。集めて並べて眺めるのにいいんです。ミドルは「基地セット」を制作しましたが、それは絶対に作りたかったんです。プレイバリューの楽しさがありますから。

ーー「基地セット」は驚きました。そんなサプライズを、ほかでも何か考えていたり、作りたいという野望はあったりしますか?

ハッキリ言えませんが、ちらっとはありますので楽しみにしててください。

ーー情報解禁、待っています。キングサイズやジャンボサイズについても聞かせてください。

キングサイズは、要するにスタンダードと同じで、当時未発売だった怪人の穴埋めをやりたかったんです。ジャンボサイズは単に1970年代に発売された全高約50cmのシリーズや当時ソフビのバリエーションのひとつとして店頭サイズというのがあって、それに近いサイズ展開がしたかったからです。

ーーなるほど。あとミニがスタンダードの付属で始まりましたね。

実は1970年代当時『仮面ライダー』の「ショッカー怪人」は、ミニの種類が1番充実しているんです。それもあってスタート当初から、いずれミニも展開したいと思っていました。イベント用として製作したのが最初かな? 単品発売だと製作コストもあるから、付属させればスタンダードのバリューも上がりますから。ちょうどシリーズが10周年を迎えて今後、再販が続きますから、そこにミニを付属させたいと考えています。

ーーそうするとミニも充実しますね! ちなみにサイズ違いの原型は、造形の違いなど何か意識されていたことはありますか?

特に決め事はないですが、もともと1970年代に発売された怪人ソフビの保管が目的だから、製作コンセプトと言えるかどうかわかりませんが、1970年代当時のソフビのようにスタンダード、ミドル、ミニとサイズごとにあるそれぞれのパーツ分割を踏襲するようにしています。ただこのシリーズは基本的に東映さんより「1970年代当時に発売された『仮面ライダー』ソフビのテイストは、当時のそのメーカーさんのモノなので、そのまま造型をトレースしないで下さい」と要望されているんです。ただ当時は資料があまりない中で製作していたと思うんです。今は映像資料などが豊富にあるのでディテールなど細かくなるので、東映さんからの要望とあわせてレトロ調ではあるけど、ややリアルな方向にしていますね。1970年代の当時風を忘れないのが基本なので、その辺は上手く造形バランスを考えています。

ーー先ほど年間計画の数をお聞きしましたが当初、月2体で徐々にサイズ違いが増えてって……。

月4体にミドル3体というレギュラーに加えてイベントが年に2回ぐらい重なるのが1番マックスでしたね。月に8体ぐらい同時進行していた時もありましたからもうフラフラでした(苦笑)。

ーーその製作数は本当に凄いです。それで10年間走ってる!

もちろん全部ひとりでは無理なので何名かお願いしています。ただし原型からのワックス変換は完全に私ひとりでやっていますから。

ーーそれはソフビがメインだった1960年代~1970年代のおもちゃメーカーと比べて同じか、それ以上の作業量じゃないですか?

さすがに当時以上ってことはないと思います。でも現在だったら多分トップランナーだと思います(笑)。

ーーそう思います。ちなみに全国のソフビ者から様々な反応があると思いますが、そうした声は耳に入っているのでしょうか? 

ファンの反応は様々ありますが、こちらは毎月製作するので目一杯だから気にしている余裕はなかったですね。

ーーここまできたら全ての東映ヒーロー作品で全怪人をぜひコンプリートしてほしいと感じます。

『仮面ライダー』がコンプリートしたら休みたい気持ちもあります。でもまぁ、その時の流れに任せます。

ーー東映の全作品とは言わずに「仮面ライダーシリーズ」だけコンプリートはどうですか?

正直終わりは見えないですね。

ーースタート当初ここまで展開が広がると考えていましたか?

いや全く思ってないです。

ーーどんどんシリーズが膨らむのは赤司さんという要因も大きかったんですか?

先ほども言ったように赤司さんと話すとシリーズを減らすより、膨らむ方向にいってしまうので、あとはそれを「なんとかこなせるようにしよう」と考えてしまうんです。どこまでやれるか挑戦する感じ。もう格闘技みたい……造形プロレスって感じ……「フラフラになるまでやったら結果は出るだろう」っていう。

ーー何度も言いますがワーカーホリックですね。

そうですね、もう「やるだけやる!」って感じでした。

ーーそれで10年たったわけですから改めてビックリします。

正直いうと『仮面ライダー』の「1号編」「2号編」をコンプリートさせるという目標に向かっていたら自然に時間がたっただけなんです。

ーーその思いが途中で切れないのは凄いです。

私の場合、1回やり出したらコンプリートぐせがあるので。ほぼ途中で投げ出したことがないんです。コレクションも一旦コンプリートしたらリリースしてしまってゼロスタートにしますから。過程でやめるということは、ほぼないかな。先ほども言いましたが、このシリーズもスタートするときに覚悟しましたから。

ーーちなみにこれまで製作したソフビのサンプルをお持ちだと思いますが、それはどうされてるんですか?

サンプルは2期めのリリースがあるので一応全部あります。お見せできませんが工房の壁が3面、全部埋まってますよ。

ーー凄い! そんなシリーズで今後、何かサプライズなどありますか?

サプライズは話したらサプライズにならないですよね(笑)。さわりだけなら……メインの敵キャラで大きい幹部が抜けているのですが、それをやりたいと思っています……。 

ーー(色々聞いて)それは楽しみです! そういえば突然、質問は変わりますが昨年からのコロナ禍の影響は何かありましたか?

工場が開いたり閉めたり、打ち合わせが1日ひと組みになるとか大変でした。ただソフビに関しては、コロナ禍の問題だけではないんですけどね。現在の国内ソフビの生産インフラって、このシリーズがスタートした時のもう半分ぐらいで結構、貴重なことになってるので大変なんです。

ーー成型工場は最近は若い世代が増えてないですか?

いや、若い世代で始める方もいるけど、やめてしまうのも早いみたいです。昔からあるような職人気質の会社が継続しなくなってる。工場数も半分ぐらいに落ちこんでるみたいです。成型は比較的すぐにできますが、金型工場は設備が難しいですからね。

ーー金型製作については、大変だとよく聞きます。なんとかなってほしいと思いますね……質問に戻ります。シリーズで個人的に1番思い入れのあるヒーローや怪人を教えてください。

そんなの選べないです(笑)。

ーー話を聞いていると全「ショッカー怪人」なのかな? と思いますが?

全然そんな意識ではないです。抜けているから保管したかっただけですから。

ーーでは質問を変えて製作が大変だったのは?

大変だったのは……話が違うかもしれませんが交通事故を1回やって……右肩が外れて手術したんです。ただ長期入院すると原型の締切に間に合わなくなるので応急処置だけして1週間で退院して、原型を納品してからもう1回再手術という……。他にもいくつか……(以下略)。

ーーそれはいつぐらいの話ですか?

もう5年前ぐらい前です。ほかにもいろいろ体にダメージはありますね……。「シリーズ継続は無理かな?」って覚悟した時が3回ぐらいありました。でも1ジャンルを突き詰めようとしたら、そのぐらい大変。これは聞いた話ですが、ちょっと前に80歳近い職人さんが工場作業中に大ケガされたらしいんですが「手が動く限り仕事は大丈夫!」と言っていたらしいんです。昭和世代の職人さんですが、こういう人たちは、鉄人ですよ。普通、大怪我されたら気持ちも凹むだろうし年齢考えたら、それで引退してもおかしくない。でもあの世代は仕事が出来るなら続けてしまうんですよ。そう思うと世代世代で仕事に対する態度が全く違いますね。そういう意味では、私も事故にあいましたが、仕事は続けられたので多少、そういう世代の仕事魂を受け継ぐことができてるかな? とにかくこれだけのリリース数をこなすということは現場が壮絶なわけです。大変を通り越して……激烈でしたね(笑)。

ーーそんな激烈な「東映レトロソフビコレクション」には相当の思い入れがあると感じます。

あーーどうなんでしょうね。

ーーあれ?

……もう走り続けた結果ですよ(笑)。とにかく『仮面ライダー』の「1号編」「2号編」の「ショッカー怪人」がもう少しでコンプリートするので、まずはそこでひと区切りだと思っています。

ーーお疲れ様です! では最後に毎月リリースを期待している全国のソフビ者へひとことお願いします。

月並みですが購入していただけるならシリーズは続けることができるので……皆さんたくさん購入されて「もう置き場所がないのでは?」と思うのですが……今後ともよろしくお願いします! みたいな感じですね。
(2021年7月8日電話にてインタビュー)

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